電子部品などを販売するRS Componentsは、イノベーションを事業戦略の中心に位置づけている。
「Raspberry Pi」の販売代理店でもある同社は、事業効率の改善や顧客サービスの向上のために、積極的にイノベーションに取り組んでいる。この記事では、同社の最高デジタル・技術・イノベーション責任者であるAlexander von Schirmeister氏に、どのように優れたアイデアを発掘しているかについて話を聞いた。
イノベーションに至る道は1つではない
RS Componentsは創造的なアイデアに対して前向きな企業だが、von Schirmeister氏は、アイデアを発掘するためのモデルについて、どのようなモデルが同社に適しているかを模索する必要があったと述べている。「私は、1つのモデルがあらゆる企業に通用するとは考えていない。事業の成熟度やリスク環境に合わせて変える必要がある」と同氏は言う。
「わが社には、私の配下にあるイノベーションを担当するチームが単独で扱っている創造的なアイデアがいくつかある。しかし、イノベーションが事業部門の部署で推進されるケースもある。ブレークスルーとなるようなイノベーションに関しては、失敗するかもしれないが、成功すれば将来新たな事業につながる可能性があるようなアイデアを探している」(von Schirmeister氏)
同社のアイデアの発掘プロセスは、テレビ番組の「マネーの虎」のような方式で行われ、企画を持った社員が、RS Componentsの上級役員にアイデアを説明するのだという。もし成功すれば、そのアイデアの推進に予算が与えられる。
「このやり方は、わが社ではうまく行っている」とvon Schirmeister氏は言う。「しかし、われわれは常にアプローチを進化させているため、1年後にはアプローチが変わっているかもしれない。また、イノベーションを組織側だけで進め、事業部門を蚊帳の外にしてしまわないように注意する必要がある。アイデアをいくつも思いついても、事業部門に持って行ってみると、彼らは関心を示さないかもしれない」
同様のアプローチを模索しているリーダーは、事業部門と密に連携を取るべきだという。von Schirmeister氏は、事業部門と協力しながら進めるアプローチを取った場合、新しいアイデアを市場に出すまでの時間が長くなるというデメリットが生じるかもしれない一方、新たなコンセプトが顧客と事業部門から見て有効かどうかを確認できるという大きなメリットがあると述べている。