医療技術はこれまで以上に急速に変わりつつあり、今後われわれが受ける一般的な治療に、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)が一役買うことになるのは確実だ。
これらの技術に期待される成果は驚くべきものであり、ARヘッドセットを着けた看護師が、一目で診断情報を読み取れるようになるのも、そう遠い将来のことではないはずだ。また、マインドフルネスや脳が持つ改善能力に関する研究が進むにつれて、麻酔が利用できない患者に痛みを伴わない手術を行える可能性を拓く、新しいVRアプリケーションも登場すると見られている。
しかし、議論が盛り上がることが多いのは、実際に医療の現場で利用されている、今の世代の複合現実(MR)アプリケーションの話題だ。
ARとVRはすでに、手術室や医療訓練、診療所、在宅医療などの現場に入り込み始めている。自閉症の子どもを持つ人や、外科医の訓練を受けている人であれば、すでに何らかの形でこれらの技術に接している可能性も高い。
この記事では、これらのことを念頭に、実際に現場で利用されている、医療製品を提供する3社のAR/VR企業を紹介する。
VRHealth
ボストンに本社を置くVRHealthは、臨床現場や自宅で利用される、VRを使った没入感の高いゲーム、動画、運動のシナリオなどを提供している。
背景にある考え方は、ほかの場所に行ったように感じさせるVRの能力を活用することで、患者を仮想的に別の場所に運び、病院の環境では難しいような活動を促すことができるというものだ。患者の動きをすべて分析し、定量化できるため、患者と医者が基準となる数値を把握したり、回復状況を追跡したり、新たに得られた情報を使って個人に合わせた治療を行ったりすることが可能になる。
VRHealthは、ISOの認証を受けた世界初のVRヘルスケア企業であり、同社のすべての医療アプリケーションが米食品医薬品局(FDA)の認可を受けている。
AccuVein
静脈注射の針を刺されるのは恐ろしいが、未熟な医療スタッフにとって、針を刺すのはその10倍も恐ろしい経験だ。
AR医療のパイオニア企業であるAccuVeinは、患者の肌をスキャンして血管の位置を特定し、針を刺すのを簡単にしてくれるデバイスを作っている(当然、それによって患者の痛みも減る)。同社によれば、主力製品である「AccuVein AV400」は、リアルタイムで肌の表面に血管系のマップをデジタル的に表示することができる。これによって、臨床医や看護師は標的とする血管を確実に選べるというわけだ。
AccuVeinの視覚化技術を利用すれば、最初の穿刺で成功する可能性が3.5倍改善するという。
Augmedics
2014年に設立されたイスラエル企業Augmedicsは、ヘッドセットで患者の脊椎上に脊椎に関する情報をオーバーレイ表示する、外科用の技術を開発した。
このARディスプレイには、デジタル情報と現実の視界が一緒に表示され、外科医は事実上、患者の体の中にある脊椎を見ることができる。
AccuVeinのシステムと同じく、Augmedicsの「xvision」も、医者が患者の解剖学的構造を切開することなしに把握できる技術であり、体外からの処置や、侵襲性を最小限にとどめた手術による処置を可能にする。
「シースルー手術」と銘打たれたxvisionのシステムには、高品質な商用ヘッドセットの透過的なARレンズを多く作っている会社である、Lumus製の透明なARディスプレイが使用されている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。