ベアメタルのコンテナを手がける企業であるDiamantiが576人のITリーダーを対象に調査し、その内容をまとめた「2018 CONTAINER ADOPTION BENCHMARK SURVEY」(コンテナ採用に関する2018年のベンチマーク調査)レポートによると、大企業はコンテナの採用によって、VMwareの仮想マシンなどの商用の仮想化技術に対する依存を減らし、コストを削減しているという。同レポートは、コンテナ採用の現状に目を向け、コンテナ「スタック」技術の選択肢を評価するとともに、仮想マシンインフラに対するコンテナの影響を分析し、企業は仮想マシンのライセンス料金に大きな不満を抱いているという知見を得ている。
回答者の44%は、一部の仮想マシンをコンテナに置き換えようと計画しているという。また55%はVMwareのライセンス料金に年間10万ドル(約1100万円)以上を費やしているという。
VMwareの最高経営責任者(CEO)Pat Gelsinger氏は2016年に、「われわれの大きな戦略は『VMware vSphere』(同社がエンタープライズ向けに展開している主力の仮想化製品)をそのままのかたちで販売しないというものだ」と述べていた。筆者は率直に言って、Microsoftの「Hyper-V」やLinuxの「KVM」といった「無償の」仮想化製品の台頭を考えると、VMwareのハイパーバイザ売り上げの低下に、これほどまでの時間がかかっている点に驚きを感じている。
VMwareはこの難題に対処するために、「OpenStack」クラウド市場に参入したり、ハイブリッドクラウド市場における地位の強化を目的としてIBMやAmazon Web Services(AWS)と提携した。端的に言うと、VMwareは自社の利益を追求するうえで、同社の社名に冠された仮想マシン(VM)に依存しなくなっている。
VMwareがこれまで軸足を置いていた市場が、競合他社のハイパーバイザの台頭によって侵食されたのは事実だが、コンテナの登場によってさらに大きな影響がもたらされている。Diamantiによると、回答者であるITリーダーの半数近く(47%)が本番環境でのコンテナ配備を計画しており、12%は既に配備したとしている。
最も広く採用されているコンテナ技術が「Docker」(52%)と「Kubernetes」(30%)となっているのは驚くに値しない。回答者の71%は仮想マシン上でコンテナを配備しているため、仮想マシンが姿を消すということはないだろう。仮想マシンの存在価値はあるはずだ。しかし、ITリーダーらは仮想マシンのライセンスコストを抑えたいと考えている。
興味深いことに、コンテナに向かうこの動きは企業幹部らによって推進されているわけではない。同調査によると、コンテナの採用を主に推進しているのは、プラットフォームの設計者(22%)と、開発者(22%)だという。これらの後にはIT運用チーム(17%)と、統合DevOpsチーム(17%)が続いており、企業幹部はたったの9%となっている。
コンテナは主に、クラウドネイティブなアプリケーションで使用されている(54%)。その後に、ステートレスな軽量アプリケーション(39%)、クラウドへの移行(32%)、レガシーアプリケーションの近代化(31%)が続いている。
また、本番環境でコンテナを稼働させている回答者が考えている「最大の課題」として、インフラがトップに挙げられており(30%)、その後にはセキュリティ(22%)、配備(22%)、パフォーマンス(19%)、永続的ストレージ(12%)が続いている。
とは言うものの、コンテナに限らず、新技術の採用における最大の障壁が既存の慣習を維持しようとする力にあるのは間違いないだろう。企業におけるIT部門の方向性は一夜にして変わるものではない。Dockerは2018年に5周年を迎えた。コンテナは、仮想マシンに軸足を置いてサーバアプリケーションを稼働させているIT部門の進路をゆっくりと、しかし着実に変えつつある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。