慶應義塾大学医学部と富士通は、診療支援のための人工知能(AI)技術を開発したと発表した。慶大医学部では2012年から富士通の電子カルテを利用しており、両者は蓄積された膨大な臨床データにAI技術を適用する共同研究を2018年1月から行っていた。
今回開発したAI技術は、医師の所見などの文章形式のデータ(テキストデータ)に、自然言語処理技術を用いて前処理を施した上で機械学習を適用し、入院や手術、他科への依頼などの対応が必要な症例を分類する。
診療支援に適用したAI技術
放射線科医が読影した画像検査報告書に対してこの技術を活用し、高い精度で入院依頼の必要な症例の分類に成功した。検査結果や検査報告書が出た時点で優先度をAIが推測し、担当医に通知する診療支援ができるようになり、適切な対処を迅速に行う医療体制をサポートすることが期待される。
自然言語処理技術は、形態素解析エンジン、データクレンジング手法を活用しており、適用医療分野特有の言葉の表記の差異に対応する。また、富士通と奈良先端科学技術大学院大学ソーシャル・コンピューティング研究室の共同研究により得られた技術を活用し、症状の有無を文章の係り受け関係から判断、そこから説明変数としてキーワードなどを抽出する。
診療支援の学習済モデルは、前処理した医師の所見と、それに対する入院依頼などに関する医師の対応について機械学習し、新規の症例(入力データ)に対しどのような医師の対応が必要か分類する。
今後はさらに機械学習の精度を高め、医療現場での実用化に向けて検証を進めるほか、学習済みモデルのAPI化を推進して電子カルテシステムとの連携を図る。