ITシステムの運用でバックアップが重要であることは言うまでもないが、その方法に“ロードマップ”的なものがあるのはご存知だろうか。まずは簡単に着手できるところから始め、そこからより堅牢なデータ保護体制を実現するために冗長性を高めたり、仮想化やクラウドなど主流のテクノロジを使ってその手法を徐々に高度化させたりしていく。ここで目指すのは、将来にわたって使えるバックアップの仕組み作りだ。
オンプレミスでバックアップ環境を持つ
まず本番環境に何かあった時のために、その環境の延長線上でデータ保護を行う。外付けのHDDかNAS(Network Attached Storage)を接続して、そこに本番データのバックアップを取るか、それが難しければ本番データの入っているマシンの筐体内で別のフォルダにデータをバックアップする。
大切なデータを守るためにも、バックアップの習慣を身に付けていただきたい。バックアップソフトを使えば、日次でも、週次でも、簡単にその運用を自動化できる。バックアップを適切に取得できたかどうかもGUIですぐ分かる。面倒だと感じる作業もツールを活用すれば、容易にルーティンワークに溶け込ませることができる。しかし、人はミスするものであり、機械は壊れるものだということを肝に銘じておきたい。誤って消去したデータを復旧しようにも、身近に専門家がいないと、驚くほど高額な費用がかかるし、壊れてしまったものを取り戻すことはできない。悔やんでも後の祭りだ。
データのリストア作業は、対象がファイルのような一部のデータなら、ユーザーがファイル管理ツールを操作するような感覚で自ら取り戻せる。もし本番環境のHDDに障害が発生した場合は、新しいマシンやHDDを用意し、バックアップソフトで復旧用のDVDを作成して、それを新しい環境にインストールして立ち上げる形だ。
ただし、こうした方法はあくまでバックアップの第一歩だ。これらが機能するのは、本番マシンのHDDに障害が発生した場合や、本番データを間違って消去してしまった時など限られたケースである。外付けのHDDやNASで障害が発生しないとは限らず、ましてや本番環境のある社屋自体に事故や災害が発生すれば、こうしたデータ保護策は行わなかったことに等しい結果となってしまう。データの重要性を鑑みて、どうしても失うわけにいかないデータは、本番環境から物理的に離れた遠隔地にもう一つのバックアップをプラスすることを検討しよう。