中国のインターネット業界を学ぼうとする人なら「BAT」という言葉は聞いたことがあるだろう。中国インターネット最大手である、「百度(Baidu)」「阿里巴巴(Alibaba)」「騰訊(Tencent)」の3社の頭文字を合わせたものだ。百度は検索を、阿里巴巴はEC(電子商取引)を、騰訊はSNSやゲームを柱にした会社だが、3社とも柱の事業以外にも幅広く事業を展開している。
BATという言葉は2011年ごろからよく使われた。しかし、近年では百度が脱落し、「AT」なる阿里巴巴と騰訊の2社の頭文字を合わせた単語が出てきている。スマートフォン普及による検索行為の重要性の低下と、阿里巴巴陣営のアントフィナンシャルの「支付宝(Alipay)」との騰訊の「微信支付(WeChatpay)」の電子決済がポータルとなったことが主な原因だ。ATという呼称以外にも、BATにECの京東(JD)を加えて「BATJ」という呼び方もある。
スマートフォン時代の今、ネットユーザーの財布を確保した支付宝や微信支付は、揺ぎ無きポータルとなっているが、その一方で新たな手法で自社サービスにネットユーザーを呼び寄せようと新たな競争が起きている。ネット大手各社がキャリアと手を組み、指定のアプリ利用時のデータ通信量をカウントしない新しい通信プランを提供している。
騰訊とキャリアの中国聯通(チャイナユニコム)の「騰訊王ka(kaは上と下を合わせた字)」で、騰訊王kaは、月19元(約320円)、データ通信量1元800Mバイトから利用可能で、騰訊系のネットサービス利用についてはデータ通信量を算出しない。騰訊系のネットサービスとは具体的には、インスタントメッセンジャーの「微信」や「QQ」、同社のゲームタイトル「PUBG:PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ)」「王者栄耀」、人気動画配信サイト「騰訊視頻」や音楽配信サイト「QQ音楽」をデータ通信量を気にせず遊ぶことができる。
また自社ではない「微博(Weibo)」も利用できるようにするなど、対応サービスを拡充している。騰訊王kaを認知させるべく、現在中国のさまざまな地域で、そのブランド広告を掲載している。今後騰訊王kaは、この手のSIMカードの中でも最も普及が進むのではないか、ひいてはSIMカード争奪戦においても騰訊王kaが勝つのではないかと予想する。