最新のコンピュータを火星に持っていきたいとしても、それは厳しい。宇宙放射線が電子機器に大きな被害をもたらすからだ。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、太陽系全体に吹き渡る陽子に耐える手段として有望な、新たな取り組みを進めている。
宇宙探査機の設計者は数十年間、コンピュータに“放射線への耐久性”を持たせることで、宇宙線などの放射線から電子機器を保護してきた。しかし残念なことに、耐久性と引き換えにコンピュータの処理能力は犠牲となり、開発とテストに何年も要することとなった。例えば、国際宇宙ステーション(ISS)の管理コンピュータは1985年にリリースされたIntel 386SXプロセッサを搭載し、航空宇宙大手のBAE Systemsが開発した高耐久チップは最新ノートPCが搭載するプロセッサのおよそ20分の1のクロック速度でしか動作しない。
しかしながら、そうしたやり方が必然というわけではない。HPEでは、コンピュータの異常動作を受け入れる一方で、問題の検出から深刻度の評価、状態の回復までをソフトウェアで対処する方法を構築した。
Spaceborne Computer
この手法を検証するため、HPEはIntel製プロセッサを2基搭載した標準的なサーバを工場の生産ラインから持ってきて、1年間のテストに向けてISSに送り込んだ。このマシンは「Spaceborne Computer」と呼ばれ、現在に至るテスト期間の大半を軌道上にとどまり続けている。
「ローンチから345日が経過しており、非常にうまくいっている」とHPEでAmericas HPC Technology Officerを務めるMark Fernandez氏は述べた。
こうしたSF的な課題と、より現実的なコンピューティングの問題には、興味深いつながりがある。Spaceborne Computerの目的は、月面基地や火星探査で役に立つ技術を開発することだ。だが、そのテクノロジはまた、今日の大企業にコンピューティング能力を提供するデータセンターにおいて稼働するコンピュータにも有用であるはずだ。
「現在7件の特許を出願中だ」とFernandez氏は述べた。