日立グループ約30万人が取り組む働き方改革--社内で培ったノウハウを外販

藤本和彦 (編集部)

2018-08-20 07:00

 総務省が主催となってテレワークの全国一斉実施を呼び掛ける働き方改革運動「テレワーク・デイズ」が7月23~27日の5日間にわたって開催された。日立製作所では24、27日を奨励日として、首都圏近郊で勤務する従業員約1万3000人を主な対象に、サテライトオフィス勤務や在宅勤務の制度活用を促した。

 同社は、20年以上前から人の気持ちに配慮した働き方のあるべき姿を追求してきた歴史がある。人事部門とIT部門が両輪となって、経営戦略としての女性活用支援やダイバーシティ推進に取り組んできた。

 2016年12月からは、東原敏昭社長をリーダーとした働き方改革の全社運動「日立ワーク・ライフ・イノベーション」を開始。従業員のボトムアップによる取り組みとして、成果を上げた事例について横展開を図るとともに優秀事例の表彰などを実施している。

サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション推進本部長の桃木典子氏(中央)と、同グループクラウドサービス部 兼 働き方改革ソリューション部長の井上進一朗氏(左)、システム&サービスビジネス統括本部 営業統括本部 サービス営業推進本部 ソリューション開発営業部 商品企画開発G 主任技師の園田英史氏(右)
サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション推進本部長の桃木典子氏(中央)と、同グループクラウドサービス部 兼 働き方改革ソリューション部長の井上進一朗氏(左)、システム&サービスビジネス統括本部 営業統括本部 サービス営業推進本部 ソリューション開発営業部 商品企画開発G 主任技師の園田英史氏(右)

 また、従業員が限られた時間を効率的に活用して最大限の成果を上げるため、時間や場所にとらわれずに仕事ができる「タイム&ロケーションフリーワーク」を推進。具体的な施策として、「在宅勤務制度の拡充」「IT環境基盤の整備」「サテライトオフィスの設置」が挙げられる。より生産的な働き方を実現していくための社内の意識改革も同時に進めた。

 2016年には自社内にサテライトオフィス「Biz Terrace」を設置。2018年8月時点で、首都圏を中心として8拠点に拡大している。また、2017年10月には社外に設ける初めてのサテライトオフィス「@Terrace」を開設した。外部の運営会社とも契約し、利用可能なサテライトオフィスは合計で41拠点に上っている。1日の利用者数は平均約2500人に達するという。

 一定時間の出社義務や実施回数に制限なく利用できる在宅勤務制度も導入した。自宅に加え、育児、介護、看護などのために必要な場所や単身赴任者の実家での勤務が可能。時間や場所にとらわれない働き方を実現するため、業務用件に合わせたスマートフォンやタブレットなどITツールの提供も拡充した。育児や介護で休暇中の従業員には、シンクライアント端末を自宅に持ち帰られるようにした。

Biz Terraceの利用イメージ(出典:日立製作所)
Biz Terraceの利用イメージ(出典:日立製作所)

 在宅やサテライトオフィスでの勤務は、上長への申告制で全従業員が対象となる。ただし、公園やカフェなど社外の公の場で仕事ができるのは、セキュリティの観点上、責任が持てる管理職以上としている。

 同社の働き方改革を支えるIT基盤としては、職場との情報共有を可能にするコミュニケーション基盤の構築、セキュリティと利便性を兼ね備えたネットワーク・認証基盤や仮想デスクトップ基盤(VDI)の構築運用に取り組んできた。

 日立グループのIT活用状況は、2018年4月時点で、シンクライアントが11万人、Exchangeが27万人、Salesforceが3万人、Office 365が10万人となっている。

 さらに、サポート/ヘルプデスク体制の整備、運用ルールやガイドライン策定といったITガバナンスの強化も徹底した。特に、クライアント管理は、タブレットやスマートフォンなどを活用するようになり、ソフトウェア資産管理やOSパッチ/パターンファイル配信、デバイス管理などの要素が絡み合って一気に複雑性を増している。

 2017年には「統合クライアントセンタ」を立ち上げ、クライアント端末の調達、運用、保守、廃棄の一連の業務を集約した。これによって、コスト低減やITガバナンスの向上を実現させている。

 こうした取り組みによって、日立製作所 ITビジネスサービス本部における調査結果では、従業員満足度が56.8%から61.0%に向上したほか、在宅勤務の取得率が0.6%から2.7%の4倍に増加。一方で、ビデオ会議やサテライトオフィスの活用によって、一部のオフィスを賃料の安い郊外に移し、賃借料を50%削減した。また、拠点間の会議をビデオ会議にすることで、出張や移動に関わるコストを22%削減したという。

 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 経営企画本部 経営企画部 グループリーダー主任技師 石川太一氏によると、経営企画部では、働き方改革の一環として定例会を廃止した。状況報告の場を減らすことで、同僚が何をやっているか分からないという弊害もあったが、そこは能動的に情報を取りに行くことを部内で徹底した。今後は社内SNSなどの仕組みも試みるとしている。

 「在宅勤務は小さな子どもがいる家庭でよく使われてきたが、最近はより一般化してきている。在宅勤務の方が仕事の割り込みが少なく作業に集中できる。また、職場はフリーアドレスの導入で業務スペースが限られているため、自宅の方が執務環境を整えやすい」(同氏)

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