楽天は7月11日、米R Softwareと共同でAPIマーケットプレース「Rakuten RapidAPI」を立ち上げた(関連記事)。APIを通じてさまざまなビジネスをつなぐ「APIエコシステム」の普及が期待され、海外を中心にAPIマーケットプレースが広がる中、日本での展開を目指す同社の狙いを担当者に聞いた。
Rakuten RapidAPIは、R Softwareが展開する世界最大級というAPIマーケットプレースのノウハウをベースに、楽天が中心となって日本およびアジア(2019年以降)でサービスを提供する。R SoftwareのAPIマーケットプレースは有償・無償の8000種以上のAPIを公開しており、開発者を中心に約50万ユーザーを抱える。楽天は2022年までに、さらに70万の新規ユーザーの獲得を目標に掲げている。
Rakuten RapidAPIのインターフェース
同事業を担当する楽天コミュニケーションズ API Marketplaceビジネス部長のJed Ng氏は、APIを活用したビジネス市場(APIエコノミー)が拡大する中、APIを提供する側(APIプロバイダー)と利用する側(開発者)の間にさまざまな課題が浮上しており、APIマーケットプレースを通じて解決を目指すとその狙いを説明する。
「APIの提供拡大で、ユーザー側は求めるAPIを探しにくくなり、利用しているさまざまなAPIの管理やコストの煩雑さも負担になっている。一方の提供側は、大手ではユーザーに(サービスによって異なる)ブランドの認知が難しく、ベンチャーではそもそもユーザーにアプローチできないことや、課金や請求、パフォーマンスの管理にも課題を抱えている」(Ng氏)
楽天単体でも、例えば、「楽天市場」や「楽天トラベル」といった主要サービスにおけるAPIのリクエストは、2017年6月の月間113億ヒットから2018年6月は同166億ヒットに、この1年で47%増加しているという。同社では2006年から個々に提供するAPIのオープン化を進めてきたが、APIマーケットプレースをこれらも含めて提供する“ゲートウェイ”という位置付けになり、APIエコノミーのプラットフォームとして提供していく考えだという。
Rakuten RapidAPIで開発者は、ポータルから自身が必要としているAPIを検索で探したり、選択したAPIについて開発言語に応じたテストやSDKのダウンロードなどをしたりできる。有償提供のAPIについては、日本円の概算費用も分かり、ダッシュボートで利用中のAPIのコール数やエラー数、遅延といった状況や利用料金などを一括して管理できるようになっている。APIプロバイダーは、提供したいAPIを容易にマーケットプレースへ登録でき、ユーザー数やコール数、月次の売り上げといった状況をダッシュボートから管理できるようになっている。
Ng氏によれば、Rakuten RapidAPIは最初の1カ月間で約8000のユニークユーザーが利用し、2万7000ページビューを獲得、「まずは順調なスタートを切ることができた」と語る。国内外にさまざまなAPIマーケットプレースが登場する中で、今後は「開発者の多様なニーズに応えられるラインアップの幅の広さを訴求していく」と話す。
APIの利用自体は、国内でもウェブサービス開発などのシーンで身近になった。しかし、「APIエコノミー」と称される、より広範なビジネスでの利用は、海外に比べて遅れているとの指摘が聞かれる。この点についてNg氏も「日本の市場には特殊性があるだろう」と指摘し、開発者コミュニティーの活性化や分かりやすいビジネス事例が必要との見方を示す。同社では今後、これらの取り組みを推進するほか、Rakuten RapidAPI自体もユーザーインターフェースの改良など使いやすさの向上を重点施策に挙げている。
なお、APIの利用をめぐってはユーザーの間でAPI提供者の方針変更などがリスクになると捉えられるようになり始めた。例えば最近では、TwitterがUser Streams APIなどの段階的な廃止を掲げたことで、一部のサードパーティーがサービスを終了せざるを得なくなくなるなどの事態が生じている。Ng氏は、Twitterの施策については「APIプロバイダーとしてはかなり極端なケースと思う。多くのAPI提供者にとって、マーケットプレースは新たな収益源になり、新興企業にとってもロングテールでユーザーを獲得していけるプラットフォームになるはずだ」と話し、マーケット提供者の立場から双方を円滑につなぐ役割に注力していくと述べている。