中堅企業向けのビジネスを強化しているデル。特に“ひとり情シス”に代表されるようなIT人材不足の問題を抱える中堅企業を支援するソリューションの事業展開を進めている。同社は2018年6月、パートナー企業が参加する、ひとり情シスにターゲットを向けた戦略ブートキャンプ「ひとり情シス憲章会議」を開催した。“ブートキャンプ”の名前にふさわしく、参加パートナーは隔離された環境で丸一日のディスカッションやワークショップを行った。
参加したパートナー企業は、リコージャパン、富士ゼロックス九州、キッセイコムテック、三谷商事などの地域をカバーするパートナーに加え、SAPジャパン、アイ・ピー・エスなどのグローバルレベルの統合基幹業務システム(ERP)を提供するITベンダー、中堅企業へのストレージ導入の経験豊富な図研ネットウエイブなど。現在、デルとひとり情シスへのサポートを強化することで協議を進めているパートナー企業たちだ。
ひとり情シス憲章会議とは?
デルの清水博氏
会議の冒頭、デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏が開会宣言と開催する理由を説明した。
「デルでは中堅企業分野でビジネスが躍進しており、ひとり情シスの課題と向き合っている。今回参加したパートナーの知見やソリューションを集約し、さらなるひとり情シスの課題を解決するためブートキャンプを開催したい」
この会議の目的は、中堅企業のIT活用の現状を正確に把握し、ひとり情シスの直面する課題、今後取るべき指針について各社・各人の知見を集結し、ITにより顧客企業の競争力を強化し、ITの管理工数の低減を目的に提案できるアクションプランを策定、共有することにあるという。
同会議では、ひとり情シスを取り巻く課題について以下のように定義している。
- 人員を増やせない
- 検討時間を費やせない
- スモールスタートは実際には存在しない
- 社内に持つべきコア技術が分からない
- グローバル展開を予期していない
こうした「ないない」尽くしの環境の中、ひとり情シスが今後どのように活動していくべきか、また、ソリューションパートナー企業は今後どうそれを支えていくかが会議の主要テーマだといえる。
なお、デルではひとり情シスを7つのタイプに分類している。ITに関与する部門との関係性と、IT経験の豊富さを縦横の軸で表し、勤続年数やIT知識・経験の量に応じてそれぞれのタイプに分けている。その特徴や詳細については、以下の連載を参照してほしい。
会議では、その特徴について参加メンバーと情報を共有し、認識を合わせた。参加者は一言も聞きもらさないように静かに聞き入っていたのが印象深かった。
中堅企業のIT投資動向調査とは?
清水氏は、ひとり情シスが取り巻く課題について、デルが行った「中堅企業向けIT投資動向調査」の結果のハイライトを紹介。調査結果をもとにその原因となるポイントを解説した。
中堅企業向けIT投資動向調査とは、従業員数100~1000人未満の中堅企業の顧客企業760社を対象に2017年11月~2018年1月まで実施したもの。企業動向やIT動向、IT関連製品・サービスなどに関する31項目のアンケートを行った。
その結果によると、回答企業の31%が「ひとり情シス」または専任担当者なしの「ゼロ情シス」で運営。前回調査よりも4ポイント上昇し、IT人材不足の深刻化が進んでいる。
また、回答企業の30.2%が直近3年間にセキュリティ事故の被害を受けており、特に昨今話題となったランサムウェアに被害が広がっている。その一方で、情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に準拠しているのは4%にとどまるなど、セキュリティ対策チーム(CSIRT)の活動や認知も不十分であり、対応が思うように進んでいない現状が浮き彫りとなった。
さらに、政府主導で進めている働き方改革については回答企業の81%が着手しており、長時間労働の是正や労働生産性の向上などを目的に、時間外労働の上限設定やノー残業デーの徹底などの施策を実施しているという。
企業のIT化に対しては新たな動きも見られている。経営者の平均年齢が若返り(57.7歳)、IT理解度が高い世代による経営が進んでいる。清水氏は「年々確実に経営とITの一体化が進む企業が増加している」と述べる。
IT製品・サービスの動向については、2017年同様にクラウド(IaaS)の利用では、ほぼ全て移行している企業は2%にとどまり、一部利用が19%になっているものの、導入自体が進んでいない企業が74%を占めるという結果となっている。