中国ビジネス四方山話

2018年上半期でさらに進んだ中国ネット業界

山谷剛史 2018年08月28日 06時00分

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 8月に中国互聯網信息中心(China Internet Network Information Center:CNNIC)から最新のインターネット統計「第42次中国互聯網絡発展状況統計報告」が発表された。

 それによると、中国のインターネット利用者は8億人を突破し、8億200万人となった。そのほとんどがスマートフォンから(PCとの兼用も含め)利用している。2017年上半期の状況については「まだ7億5000万人のインターネットユーザーしかいない中国」でも書いているが、このときより1年間で1億人も利用者が増加した。

 スマートフォンなどのモバイル機器からの主な用途別の利用者は以下のようになる。

  • モバイルペイメント:5億6600万人
  • ショッピング:5億5700万人
  • ゲーム:4億5000万人
  • ライブストリーミング:4億2500万人
  • モバイルバンキング:3億8200万人
  • 旅行予約:3億5800万人
  • フードデリバリ:3億4300万人
  • 配車:3億4600万人
  • シェアサイクル:2億4500万人

 さて、中国は変化が激しいといわれるが、2018年前半のインターネット業界を振り返ってもさまざまな大きな変化があった。

 まず、モバイルのデータ通信量が年間で3倍近く増加した。つまりユーザーがスマートフォンからデータ通信量を気にせずインターネットを利用するようになった。通信費の低下により、リッチコンテンツの利用へのハードルが下がったのである。

 騰訊(Tencent)の微信(WeChat)の重要性が増した。2017年末にリリースされたアプリ内プログラム(小程序)が軌道に乗り、無数のアプリが登場する一方で、定番のアプリや瞬間的に人気のゲームアプリが出てきて、ますます微信の必要性が高まった。詳しくは「アプリ内ミニプログラムは如何に普及したか」をご覧いただきたい。微信の影響が高まったのか、微信支付(WeChatPay)の利用率は高く、電子決済のうち、微信支付の利用者は95.6%、支付宝(Alipay)は78.1%となった。

 騰訊はEC大手の京東(JD)と手を組み、「微信(SNS)+EC」で阿里巴巴(Alibaba)の牙城を攻める体制が鮮明になった。つまり中国のEC市場において、阿里巴巴系と「京東+騰訊」連合の二大陣営化が進んだ。阿里巴巴は商品ページへのショートムービーの導入で改善を進めた一方、後者は微信小程序やソーシャル+ECアプリやサービスで攻める。TikTokなどで知られるショートムービーは地方都市を中心に利用者が増加し、特に2月の春節時に利用が急増した。またショートムービーといえばTikTokという印象があるだろうが、2018年の前半になって、本家のTikTok中国版こと抖音(Douyin)は中国で数あるショートムービーアプリの中でトップの座へと移った。

 騰訊はコンテンツを強化しているが、コンテンツといえば、オンラインの音楽コンテンツで変化が見られた。国家版権局による後押し(国家版権局が発表した「国家版権局推動騰訊音楽与網易雲音楽達成版権合作」)により、網易と騰訊の2大サイトが版権について提携を行い、中国国内の音楽コンテンツの99%をカバー。二大サービスのコンテンツを他社も利用できるようになったことで、音楽サイトの競争は版権獲得競争から異なる競争へと変化している。

 「変化した中国」を代表する、シェアサイクルなどの交通やデリバリも改善した。交通面ではofoやMobikeの各社がデポジットをなくす動きへ移行。自転車の車体やアプリに広告を出す方向を強化した。滴滴(DiDi)などの配車サービスについては利用者の増加が目立った一方、利用者が暴力を振るわれ殺害されるなど、治安面での問題が明らかになった。ドライバーサイドのルールの厳格化を行うものの、抜本的な改善はみられていない。フードデリバリは阿里巴巴が買収した餓了麼(Ele.me)と、美団(Meituan)の2大サイトが台頭。フードデリバリにも物流システムにビッグデータや人工知能(AI)を導入したことで、30分以内の配送実現など配送時間の短縮が進んだ。

 BATと呼ばれる3社(百度、阿里巴巴、騰訊)の一角である「百度(Baidu)」と新華社ニュース情報センターが「ビッグデータ+検索+コンテンツ+配信」について、コンテンツ関連や人工知能、検索方面で戦略的提携を発表した。「より好ましいコンテンツを民間と国営のニュースサイトで迅速に伝える」ことを目指すとしている。ある意味、スマートなニュースサイトへの検閲とも解釈できる。検閲といえば、わいせつ性などがあるライブストリーミング、地方蔑視などのコンテンツが投稿される微信グループ、暴力やポルノ要素のあるゲームアプリなどが特に対象となった。

 STEM教育はまだ街中での大きな変化が感じられないが、変化が期待される業界だ。4月に発表された、オンライン教育の強化を含む「中華人民共和国民方教育促進法実施条例」の改正草案(募集意見稿)の影響だ。オンライン教育業界には、2017年全年の投資金額を上回る投資が既に行われ、特にSTEM教育方面に投資が集中しているという。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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