「"戦略的な変化を起こせたか"--レノボCIOが語る、グローバル企業の変革促すIT実現の鍵(前編) 」に続き、後編をお届けする。
--レノボのIT部門を、いわゆる「デジタル時代のIT部門」に移行するための取り組みはありましたか?
「移行」というよりも、IT部門の役割を拡大したという表現を使いたいですね。移行と言ってしまうと、従来のIT部門の仕事を置き去りにするように感じられてしまいます。私はITチームに、従来の仕事をするスタッフも、新しい仕事をするスタッフも含めて、全員が積極的に参加する体制を作ろうとしました。これは重要なことです。例えばデジタル時代のCIOが、自分をデジタルCIOだと呼んでみたところで、事業部門からの信頼が得られるわけではないからです。「デジタルCIOはいいが、うちのプライベートクラウドはクラッシュしてるし、SLAで定められているより長い時間ダウンしているんだ」と言われてしまうのでは困るわけです。
私の考えでは、IT部門にとって、以前から長い間維持してきた運用モデルの歴史があって、それが成功していたという基礎は極めて重要です。それ自体には、何も悪いことはありません。ですから私は、チームに対して「それは素晴らしいことだ。これまでの業務の遂行や運用に関わるルールは、これからも失わないようにしよう。だけどわれわれは、可能性を広げていく必要がある。それ以外にもすべきことがある」と働きかけました。
--「二段変速IT」の考え方に似ているようですね。
できるだけ言葉にはとらわれないようにしています。レノボの社内では、これを「二段変速」と呼ぶことは知っていましたし、実際わが社では、バイモーダルITも二段変速ITも試してみました。ところがそのとき、スタッフは「自分はどうなる?これからずっと、つまらない低速の業務だけをやることになるのか?」などと感じてしまいました。
わが社には合っていなかったのです。バイモーダルITや、二段変速ITでうまく行っている会社があるのは知っています。しかしわが社の文化では、スタッフに「自分は低速の仕事も高速の仕事もやれる」と感じさせることが重要でした。わが社では、全員参加で取り組むことが必要だったのです。それは「多段変速」とでも言うべきもので、適切なペースを適宜見つけるというものでした。ちなみにわが社のやり方では、ビジネスのための適切なペースを模索するために、いつでも柔軟にテクノロジを選択して導入できるため、ロックインされることはありません。