ハイブリッドクラウド成功の秘訣

プライベートクラウド環境を変えるオブジェクトストレージの特徴

山本慎一 (HGSTジャパン) 2018年09月03日 07時00分

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序章(前書き)

 クラウドコンピューティングという言葉や「X as a Service」と表される各種サービスが普及し始めてから約10年になります。インターネットと仮想化技術の発展とともに利用が拡大してきました。そこで扱われるデータについては、メール、SNS、写真、ビデオ、音声など「非構造化データ」と呼ばれる形式のものが80%に達しているといわれています。

 企業がこぞってデータ活用やモノのインターネット(IoT)を推進する中、「IT環境の改善が必要とされているが、果たして全ての環境をクラウド化すればいいのだろうか。セキュリティについても心配があるし、どうしたらいいのか分からない」という声も多いのではないでしょうか。その解決策の一つとなるのが、ハイブリッドクラウドの活用です。ただし、システムの移行や共有が容易なところをパブリッククラウドに切り替えるだけでは、運用コストを押し上げてしまう可能性もあります。

 今回から連載として、ハイブリッドクラウドの活用を考える上で、インターネット時代に利用が拡大しているオブジェクトストレージのオンプレミス導入について触れたいと思います。現在のIT環境を振り返るいい機会として読み進んでください。

 「爆発的に増加する非構造化データをオブジェクトストレージで管理し、シンプルなワークフローでデータ資産の再配置を実現する」ことをテーマに全3回で解説。ハイブリッドクラウドの効率化とTCO(総保有コスト)の改善を目指します。

  1. クラウドコンピューティングの導入、ハイブリッド化のシナリオとは
    現在、どんな環境の人が何を目指して実施すべきか。IT資産を再配置するための基準とは。IT資産管理とアクティブアーカイブを考察
  2. ハイブリッド時代のストレージシステムを考える
    インターネット時代のストレージシステムとして注目されるオブジェクトストレージの活用。クラウドサービスで普及が進むオブジェクトストレージについて、オンプレミス環境でのメリットを考察
  3. ハイブリッドクラウドとオブジェクトストレージへの移行と刷新を検討する
    ケーススタディをもとに、課題となるスモールスタート、アプライアンス導入、柔軟性・可用性・保守性、長期運用に耐えられるシステム移行と刷新を考察

 ハイブリッド化が解決策となってシステムの導入効果を実感できれば幸いです。既にハイブリッドクラウドを導入済みであれば、より現実的な課題を持ってオンプレミス環境でのオブジェクトストレージの導入を検討してみてください。

第1章:クラウドコンピューティングの導入、ハイブリッド化のシナリオとは

 拡大するユーザー要求にタイムリーに応えられない、プロジェクトごとに求められるIT環境が違う、ソフトウェアのライセンス管理やセキュリティ対策が十分でない、IT資産への投資サイクルと合わない――。常に柔軟性が求められているIT環境では、クラウドコンピューティングの導入が検討されます。ビッグデータ解析や人工知能(AI)/機械学習、コンテンツの制作・配信といった分野においては、なおさらではないでしょうか。

 クラウドの導入に当たって指針になるのは、「ワークフロー」「IT資産の再配置」「コスト」という、社内のIT環境を考える際に重要な3つのキーワードです。

・ワークフロー

 データの取り込み → 加工 → 利用 → 保存という流れは、どの分野でも共通のワークフローです。IT部門には、ワークフローの効率化だけでなく、変化への迅速な対応や運用コストの軽減なども常に求められます。

 データが爆発的に増加しているといわれる昨今、このワークフローに沿って「有効なデータを選び出す」「素早く処理する」「便利に共有する」「安全に保存する」「再利用に備える」のは簡単ではありません。シンプルなワークフローを保つことが肝心です。

 ハイブリッド化によってワークフローは複雑になりがちであり、コスト効果も出なくなってしまいます。

・IT資産の再配置

 IT資産の再配置を行いTCO削減に効果的とされるのがクラウドです。例えば、ワークフローの中で柔軟性が求められる部分をパブリッククラウドに再配置します。これにはオンプレミスのシステムとプライベートクラウドもうまく組み合わせて利用することになります。

 今の時代、全てのIT資産をオンプレミスで自社管理するのは現実的ではありません。その一方で、システムに求められる性能要件やセキュリティ、ライセンス、契約条件、コンプライアンスなどを理由にパブリッククラウドへ移行できないものもあります。

 機密データを処理・共有する際には、プライベートクラウドを用いて厳格にアクセスを制御する必要があるでしょう。また、データコピーや災害対策(DR)も含めて適切な配置を検討しないといけません。配慮すべき要素は多いのです。

・コスト

 パブリッククラウドは柔軟性とコスト面で多くの優位性を持ちますが、コスト優先で完全移行を目指すのはとても難しいでしょう。現在所有するIT資産やワークフローを考慮し、試しに一部で導入してみたものの、実際的にはハイブリッドクラウドを検討せざるを得ないでしょう。

 ワークフローによっては従量課金やデータ転送料が大きな負担になってくることもあります。また、ワークフローの簡素化・再定義が不十分な状態でハイブリッド化することで、思うようにはコストが下がらず、運用も複雑になってしまう可能性があります。

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