「厳しい質問をするからだ」――。NECの新野隆社長は決算説明会などでの筆者の質問に毎回、嫌な顔を見せていたのに、8月末の取材は迷いが吹っ切れたのか、笑顔で答えてくれた。当面の課題とその解決策が分かり、確実に目標を達成する方法が見えたからだろう。新野社長は「この1年が勝負だ」とし、利益確保を最優先とする施策を次々に実行する覚悟を決めた。
NECは2016年4月、2018年度に売上高3兆円、営業利益1500億円などとする中期経営計画(中計)をスタートさせた。その策定に当たったのは、新野社長自身だった。当時、「最低限の目標」と新野社長は語っていたが、実は社長就任の1年後に目標達成は難しいと思い始めた。技術もユーザーも競合も大きく変わっているのに、組織体制や経理財務、人事、さらには企業文化などの面でNECが変われなかったからだという。
そもそも、「NECの従業員はまじめで、言われたことを一生懸命にやる」(新野社長)。ユーザーの要求に答える力はあるが、自分で新しいビジネスを生み出すのが得意ではなかったということ。そのため、頭で考えた中計を策定しても、「できるわけがない」と現場は冷ややかになり、経営と現場がかい離する。経営が現場との信頼関係を失えば、目標は経営の勝手な考えになってしまう。結果、売り上げが最盛期の半分近くに落ち込むなど縮小の一途をたどった。
そこで、NECは約2年前、役員全員が経営責任を持つ集団体制、つまりチーム経営に移行した。これまでは社長が交代するたびに、経営方針が変わり、これまでの計画の実行がブツブツと途切れてしまったという。「結果的に悪い方向に行った」と感じた新野社長は、持続的に取り組める環境や仕組みにする。その答えの一つが、全役員が経営者となる実行力のあるチーム経営なのだろう。