本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ブロードバンドタワーの藤原洋 代表取締役会長 兼 社長CEOと、Box Japanの古市克典 代表取締役社長の発言を紹介する。
ブロードバンドタワーの藤原洋 代表取締役会長 兼 社長CEO
「日本の国際情報通信の拠点である大手町で5Gデータセンターを始動したい」
(ブロードバンドタワー 藤原洋 代表取締役会長 兼 社長CEO)
ブロードバンドタワーが先頃、東京・大手町に新設した第5世代移動通信システム(5G)対応のデータセンター「新大手町サイト」を報道陣に公開した。藤原氏の冒頭の発言は、9月1日の運用開始を控えた内覧会で、「大手町」での始動を強調したものである。
新大手町サイトは、同社が5G時代のインターネットインフラを支える拠点となることを目指し、5Gモバイルの特徴である「超高速(10ギガビット/秒)」「超低遅延(1ミリ秒)」「超多地点同時接続(100万点/平方キロメートル)」をコンセプトに開設するデータセンターである。
日本のインターネットの中心地であり、多くの金融機関や情報通信・メディア企業などが集まる大手町地区に立地し、日本インターネットエクスチェンジ、BBIX、インターネットマルチフィードといった日本を代表する3大インターネットエクスチェンジ(IX)事業者や、代表的なメガクラウドとの直接接続を実現している。
また、NTT東日本の回線を異局・異経路で利用でき、万一の停電時用にも約72時間分の発電機給電設備を装備。さらに、同じ大手町で既に運用している同社のデータセンター「第1サイト」ともダイレクト接続することで、2つの施設を連携、一体化利用することが可能だ。
藤原氏は大手町へのこだわりについて、「インターネットは1994年に日本でも商用化されたが、当時、米国と接続できたのは大手町に設備を保持していた国際電信電話(現在のKDDI)だけだった。その後、通信の自由化とともに、NTTグループも国際通信に参入したが、そうした動きも合わせて、大手町は日本の国際情報通信の拠点となっていった」と説明した。
さらに、「新大手町サイトをIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータ、フィンテックが活用される“第4世代産業革命”に向けた情報の交換拠点と位置付け、顧客企業間においても柔軟な相互接続が行える基盤を整備していきたい」とも語った。
新大手町サイトのデータセンターとしての面積は約3000平方メートルで、最大750ラックを収容可能。顔認証や静脈認証を適用した入退出管理設備などを装備している。
データセンター「新大手町サイト」の内部(出典:ブロードバンドタワー)
同氏は契約した顧客の動きについて、「ネットサービス事業者だけでなく、IoTやAIを活用したサービスを提供する企業に利用していただく割合が増えそうだ」とも。思惑通り「5G」という“看板”が奏効しているようで、確かな手応えを感じている様子。冒頭の写真のような笑顔が印象的だった。