8月31日に開催された「ガートナー ITソーシング、プロキュアメント&アセット・マネジメントサミット2018」では、基調講演のゲストにコード・フォー・ジャパン(CODE for JAPAN) 代表理事の関治之氏が登壇し、「IT人材から共創人材へ。オープンイノベーションの現場から」と題して講演を行った。行政と地域のITコミュニティーをつないで新しい公共サービスの在り方を模索する活動を紹介し、「オープンな仕組みを使ってコラボレーションを促進し、新しいことをやる」(関氏)としている。
背景には、ビジネスを取り巻く環境が「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」というキーワードで表現されるように、不安定になっているという状況がある。人工知能(AI)/モノのインターネット(IoT)などの新技術も急速に発展している。こうした中で新しいことをするために必要な要素として、関氏は“オープンイノベーション”を挙げる。
今までの企業活動(クローズドイノベーション)は、1つの会社の中だけで製品やサービスの企画からリリースまでを担当する。これに対してオープンイノベーションでは、外部と協力しながら製品やサービスを開発する。こうしないと、変化の速い世の中ではリリース時に時代遅れになっているからだ。一方でオープンイノベーションには落とし穴もあると関氏。「スタートアップと提携したがスピード感が合わない」「ハッカソンを開催したが社内で引き取る部署や予算がつかない」「アイディアの売り上げが小さくリソースが付かない」「他部署の協力が得られない」などが典型だ。
個人の成長が会社の成長につながる
一般社団法人「コード・フォー・ジャパン」代表理事の関治之氏
オープンイノベーションの根底には、社会の変化がある。「トップダウンの時代から個人の時代へと変わってきている」(関氏)という。同氏は、個人の時代について説明した書籍として、米国で成功している企業を分析した『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』(英治出版刊)を紹介した。
書籍が示す事実は、「会社は成長のためのコミュニティーだということ」(関氏)。従来の会社の存在意義は、いま遂行中の業務を最適に実行することであり、変化には弱かった。会社をコミュニティー化することによって、個人が想像力を最大限に発揮できるようになるという。
関氏は、個人の成長が会社の成長にひも付く「発達指向型組織」を成立させるための条件を3つ挙げる。1つは「Home(会社は、自己開示ができる安心安全なコミュニティーになる)」で、2つ目は「Edge(今までと違う領域にチャレンジして成長するための領域)」だ。3つ目は「Groove(フィードバックループで学びを加速する慣習)」である。
加えて人間の知性には3つの段階があるとも説明する。(1)環境順応型知性:会社に合わせるチームプレイができる知性、(2)自己主導型知性:自発的にアドバイスを行える知性、(3)自己変容型知性:他の人の意見を取り入れて視点を更新できる知性――だ。関氏は、特に自己変容型知性が重要だと指摘する。「色々なプレーヤーと調整しながら新しい価値を作っていくことができる。メタ視点を持っている。状況を分析し、新しい環境でも生き残っていける」(関氏)