近頃は企業のIT投資が大幅に増加しているが、これには経済成長や堅調な消費者支出、米国での減税、規制緩和などの複数の要因が関わっているとみられる。ITベンダー各社の最高経営責任者(CEO)も、デジタル変革への取り組みが進んでいることが、ベンダー各社の成長を後押ししていると述べている。
最近発表された大手ITベンダー各社の業績報告では、各社のCEOは口をそろえて同じことを話している。企業のIT支出は堅調であり、デジタル変革、IoT、アナリティクス、クラウドコンピューティング、および人工知能(AI)や機械学習が成長を後押ししている。米商務省経済分析局(BEA)の発表によれば、米国の第1四半期国内総生産(GDP)成長率が2.2%だったのに対して、第2四半期のGDP成長率は4.2%に上昇したという。
Salesforceの共同CEO、Marc Benioff氏は、同社の第2四半期業績報告カンファレンスコールで、企業のIT投資環境について次のように説明している。
私は、これほど堅調な投資環境をこれまで見たことがない。また、企業のCEOがこれほど積極的に投資しているのを見るのも初めてだ。各企業は減税措置や、規制緩和から大きなメリットを受けており、特に米国でそれが顕著に見られる。そしてこれは、米国、欧州、アジアのすべての企業に共通して言えることだ。私自身が最近これらすべてを経験したし、あらゆる分野で、私が知るCEOは一人残らず、これまで見たこともない水準で積極的に投資を行っている。そしておそらく、彼らがもっとも多くの金額を投資しているのがデジタル変革だ。彼らは将来に向けて、市場における有利な立ち位置を確保しようとしている。
2018年のIT支出は堅調に推移すると予想されている。Gartnerは4月、2018年の世界IT支出は、前年比6.2%増の3兆7000億ドル(約395兆円)になる見通しだとしていた。年間成長率は、Gartnerの2007年以降の予測で最も大きな数字となった。IDCは6月、ITや通信への支出は2018年に3.7%成長するが、この数字は2017年の4.2%から減少すると述べていた。IDCは、関税や貿易戦争、景気の悪化への懸念があるとしていた。
8月末までのところでは、各社のCEOはIT投資は堅調であり、増加傾向にあると述べている。CiscoのCEOであるChuck Robbins氏は、デジタル変革への取り組みが需要を後押ししていると述べている。「現在の経営環境は、世界的に一貫した経済シナリオにあると言えると考えている」とRobbins氏は言う。
同氏はドル高、関税問題、新興国における経済的重圧などのマイナス要因についても指摘しているが、全体としては上昇基調にあると述べている。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)の最高財務責任者(CFO)Tim Stonesifer氏も、同社の第3四半期業績報告カンファレンスコールで「マクロ的な観点では、IT投資は引き続き健全な状況が続いており、顧客需要も堅調に推移するだろう」と述べた。