今さら聞けないネットワーク回線の基礎

第1回:コンピュータネットワークの起源を考察する - (page 2)

飯田哲也 (アルテリア・ネットワークス)

2018-09-18 07:00

コンピュータネットワークはどのように利用されるのか?

 ネットワークと言われて最初に頭に浮かぶのはインターネットであろう。インターネットは一言で言うとネットワークのネットワークである。前述したさまざまな役割を持ったコンピュータ同士をつなぎ、その計算結果を媒介するものをネットワークと言ったが、ネットワークは世界中で作られている。ネットワーク同士をつないだものがインターネットだ。

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 一つのネットワークでできることは、例えば一つのグループの中でできることと似ている。つまり一つのネットワークの中で全ての情報を生み出し、処理をすることはできない。それならば世界中の専門性を持ったグループ同士をつなぎ合わせて協力しようじゃないか……。そういう発想で作られたものがインターネットだ。さまざまなグループ同士がつなぎ合うのだから、共通したルールが必要である。そのルールを通信の世界ではプロトコルと呼んでいる。インターネットのためのプロトコルは1960年代から開発され始め、現在に至るまでさまざまなプロトコル(ルール)が作られている。

 各グループの専門性にも変化が出てきた。今までネットワークにつながれるものはコンピュータが中心だった。そこにはそれを使う人が必ず介在していたが、人の介在しない情報通信機器(デバイス)が登場してきた。例えば監視カメラなどのIoT機器と呼ばれるデバイス達だ。IoTとはInternet of Things(モノのインターネット)の略で、Thingsの意味するところはいわゆる人の使うコンピュータ以外も含めた全てのデバイス(モノ)である。

 IoTの登場により、ネットワークは情報を共有する手段から、情報を取得する手段としても利用できるようになった。インターネットにつなぐことで、無料で発信している情報に自由にアクセスできるようになったのだ。その情報量は個人や一つのグループで集められる情報量をはるかに超えるものとなった。少ない情報から真実を見いだすためには推測が必要だ。そういった処理はコンピュータにとって難しく、主に人の役割だった。しかし、ネットワークが発達し、多くの情報を取得できるようになった今、それらを統計的に処理することで真実が見いだせるようになった。AI(Artificial Intelligence:人工知能)の登場である。

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本連載の目的

 このように、ネットワークの役割は大きく進化してきた。入出力用の端末から高性能の作業用メインフレームにつなぐためだったネットワークは、それぞれの役割を持った分散型コンピュータの情報を伝達するためのネットワークに変化した。さらに同じようなネットワーク同士を接続するインターネットという概念が生まれ、世界中で情報伝達が行われるようになった。コンピュータで処理された情報だけではなく、情報機器自体が発信する生データも取得できるようになった。そして、それがビッグデータとなり、人工知能(AI)という技術を発展させた。

図:我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算、2018年5月時点(出典:総務省 総合通信基盤局)
図:我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算、2018年5月時点
(出典:総務省 総合通信基盤局)

 伝わる情報の量は増え続け、日本だけでもダウンロードトラフィックは約12.5Tbps、アップロードトラフィックも約1.7Tbpsある(図)。これは、これまで扱ってきた情報の大容量化もさることながら、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)と呼ばれる新たな情報のデジタル化により、さらなる増加が見込まれている。もともとコンピュータをつなぐためだったネットワークはこれだけの量の情報を支える社会システムのインフラとして利用されるようになっていくわけである。

 このようなネットワークをどう構築していったらいいのだろうか? ネットワークは単体でモノが存在するわけではなく、そもそも“つながっている”などというあいまいな存在である。“つながっている”ことを確立し、維持するためには何が必要なのか?そのネットワークはどういう状況下で使われるものなのか? 本連載では、いわゆるネットワークサービスと呼ばれる領域に焦点を当て、その中身を理解して、誰もが必要なサービスを適切に利用できるようになることを目指したい。

飯田哲也(いいだてつや)
アルテリア・ネットワークス エキスパート・エンジニア
1973年生まれ。PlayStatoinシリーズの開発に関わりハードウェアおよびソフトウェアの基礎技術を会得。PlayStation2の開発においてはPS1互換エミュレータのメインプログラマーを務める。その後、台湾楽天市場のプロデューサー兼プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)としてウェブサイトの構築と運用を担当。アドテクノロジのベンチャーを経て、楽天でんわおよび楽天モバイルの立ち上げに技術担当として携わる。

2016年からアルテリア・ネットワークス。レジスタからクラウドまでソフトウェアの多くのレイヤに関わった経験と、ゲーム・電子商取引(EC)・アドテクノロジ・電話・インターネット接続事業者(ISP)と多くの業界を渡り歩いた経験をもとに技術やプロダクトのリサーチ・マーケティング業務を担当。現在に至る。

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