本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長と、シトリックス・システムズ・ジャパンの青葉雅和 代表取締役社長の発言を紹介する。
「これから10年は“つながる世界”の安心、安全に尽力したい」
(トレンドマイクロ 大三川彰彦 取締役副社長)
トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長
トレンドマイクロが先頃、セキュリティソフト「ウイルスバスター」シリーズの最新版の提供開始を発表するとともに、今年で創業30周年を迎えたことから、大三川氏が同社のこれまでの軌跡について説明した。冒頭の発言はその際に、今後のスローガンとして掲げたものである。
大三川氏は「30周年を迎えたトレンドマイクロの歩み」として図を示し、10年ごとに移り変わってきた同社のスローガンを挙げた。
まず、30年前に掲げたのは「Peace-of-mind Computing」。最初の10年は技術開発に注力していたという。次に、20年前に掲げたのは「Your Internet VirusWall」。この頃からインターネットが普及してきたのに伴い、それに関わる製品・サービスを提供。10年前に掲げたのは「Securing Your Journey to the Cloud」。この頃からクラウドが普及してきたのに伴い、それに関わるセキュリティソリューションを提供してきたという。
図:30周年を迎えたトレンドマイクロの歩み
そして今、これからの10年を見据えてスローガンとして掲げたのが「Securing Your Connected World」。この意図として同氏が語ったのが、冒頭の発言である。さらに、スローガンは10年ごとに移り変わってきたものの、30年間変わらぬものとして掲げ続けてきたのが、「デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現」というビジョンだと説明した。
その上で同氏は、「これまでの30年を振り返って確信したのは、まず脅威の情報をグローバルベースでいかに迅速に集める仕組みを作り上げるかがポイントだ。ただし、それだけでは単なる情報収集にしか過ぎない。それらの情報をインテリジェンスによって的確に分析し、必要なところにソリューションを迅速に提供できるかが、もう1つのポイントだ。この2つのポイントをカバーし、しかも時代に求められるセキュリティニーズに対して、それに応えることのできるテクノロジを生み出し続けていくことが非常に重要である」との見解を述べた。
インテリジェンスについては、1997年にフィリピンで設立したサイバー攻撃に関する分析と迅速な対応を行う「トレンドラボ」が、2007年には世界中に広がったことや、2009年にクラウド基盤を活用した脅威に対応する「Trend Micro Smart Protection Network」(SPN)を構築したことなどを説明。このSPNが現在の同社におけるインテリジェンスの中核を担っている。
同氏の説明を聞いて、10年ごとに移り変わってきたスローガンに改めてセキュリティニーズの変化を感じ取ることができた。