「そのサポートサービスは本当に適切か?」--リミニストリートのCEOが再考を迫る

渡邉利和 2018年09月14日 11時14分

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 日本リミニストリートは9月13日、都内で事業説明会を開催した。米Rimini Street 最高経営責任者(CEO)兼取締役会会長のSeth A. Ravin氏が、「第三者保守」というビジネスの現状を紹介した。

 同社は、OracleやSAPなどのERP(統合基幹業務システム)製品を中心に独自のサポートサービスを提供する、第三者保守の代表的企業。当然ながら、サポートも行うベンダー側から厳しい見方をされることがあり、同社は訴訟も抱えながらビジネスを展開している。契約を切り替えるユーザー企業から見た場合の最大のメリットは価格で、「従来の契約の半額」というシンプルな設定だ。さらに、独自の価値としてバージョンアップなどでサポート切れを強要したりはせず、本来の製品には含まれないユーザーの独自開発部分やカスタマイズ部分もサポート対象に含めているという。従来の開発元によるサポートの不満点を解消した上で、コストを下げたという形だ。

日本リミニストリート 日本支社長の脇坂順雄氏
日本リミニストリート 日本支社長の脇坂順雄氏

 日本リミニストリートで日本支社長を務める脇坂順雄氏は、自社を「Disrupter(破壊者)」と位置付け、同社のビジネスがさまざまな業界で起きているのと同様の“破壊的な革新”であり、従来の状況下で大きな利益を上げてきた大企業と摩擦が起こるのは当然との認識を示した。その上で同氏は、かつてERPがバージョンアップごとに魅力的な機能強化を実現していた時期があったと指摘、その時代には魅力的だった「サポート契約の締結期間中にリリースされた新バージョンはそのまま使える」といった状況が、既に完成の域に達しつつある現在のERPにはあてはまらなくなっているとした。

 同社顧客の熊谷組では、経営陣からSAPのバージョンアップの投資対効果がゼロと判定され、今後も旧バージョンを使っていることがビジネスの阻害要因になるまではバージョンアップをせず、そのまま使い続けることと決定、リミニストリートのサービスを利用しているという。ソフトウェアベンダーは製品のサポート期間を定めており、サポートを受け続けるためには、定期的に新バージョンに更新していかなければならない。同社のサービスは、このサイクルからの脱却を可能にするものという。

 よく指摘される既存のITの問題として、「予算の大半を既存システムの維持管理に取られ、新しいことができない」といったものがあるが、高額なサポートコストがその原因の一端にあるという見方もある。同社は、この部分のコストを削減して新たな取り組みを実現するための予算を捻出できるようになることがユーザー企業に取っての大きなメリットだと主張する。

米Rimini Street 最高経営責任者兼取締役会会長のSeth A. Ravin氏
米Rimini Street 最高経営責任者兼取締役会会長のSeth A. Ravin氏

 Ravin氏は、これまでの経緯を振り返りつつ、最新状況の説明。2014年に創業し、2017年には第三者保守提供企業としては初の新規株式公開(IPO)を実施している。同氏は、「破壊的な革新を行う以上、既存の大企業との摩擦は当然」と語りつつ、同時に「社会はわれわれの存在意義を評価しており、多数の株主が多額の投資を行っていることは、彼らがわれわれの今後の成長を信じていることを示している」と述べた。

 同社では、OracleやSAPのERPのほか、Siebel、PeolpeSoft、JD Edowars、HyperionといったOracleに買収された製品群や、IBM DB2、Microsoft SQL Serverといった製品を対象としたサポートも提供するが、新たに加えたSalesforce.com向けのサポートでは、これまでのベンダーとの敵対的な関係から一変させ、Salesforce.comのパートナーとして補完的な立場でサポートを提供する形となっている。これもまた、市場が第三者保守を受け入れつつある証拠と言えそうだ。

 なお、日本市場は同社にとって北米に次ぐ世界第2位の市場だという。だが同氏は、日本企業の特徴的なメンタリティとして、「Vendor Harmony(ベンダー・ハーモニー)」があると指摘した。あえて意訳するなら、「業者さんとのお付き合い」といった感じになるだろうか。少しでも有利な条件を勝ち取るためにタフな交渉を辞さない欧米の文化では、ユーザー企業とソフトウェアベンダーの間にも常に「提供される価値は支払いに見合ったものなのか」チェックされているという緊張感がある。

 だが対立を嫌い、長期に渡って友好的な関係を維持することを重視する日本企業は、結果的に「欧米企業に比べて日本企業はサポートやサービスに本来の価値を超えた余分なコストを支払っている」(Ravin氏)という。日本企業のこうした文化は容易に変わらないだろうが、同氏は「今後はさまざまな業種業態がグローバルな競争に直面する中で、日本企業だけがこうした無駄なコストを抱えていては生き残りが困難なので、今後は日本企業も変わらざるを得ないだろう」と話す。

 最後に脇坂氏は、「リミニストリートと言えば“塩漬けシステム”という図式に押し込めたい向きもあるようだが、塩漬けシステムは多いものの、実際には契約の半分くらいは最新バージョンのサポートだ」と述べた。日本の顧客数は150社超となっており、日本市場も変わりつつあるとした。

ベンダーサポートとのコスト比較。目に見えるサポート契約の金額は2分の1で、ベンダーサポート(左)が200万ドルだった場合は半額の100万ドルとなるという。しかし、他に水面下に隠れたコストとしてバージョンアップに対応するためのコスト(年平均で80万ドル)、カスタマイズ部分や独自開発部分などのベンダーサポートから除外される部分を別の業者に依頼することで発生するコストなどがあるため、総額では4倍ほどの差になるという
ベンダーサポートとのコスト比較。目に見えるサポート契約の金額は2分の1で、ベンダーサポート(左)が200万ドルだった場合は半額の100万ドルとなるという。しかし、他に水面下に隠れたコストとしてバージョンアップに対応するためのコスト(年平均で80万ドル)、カスタマイズ部分や独自開発部分などのベンダーサポートから除外される部分を別の業者に依頼することで発生するコストなどがあるため、総額では4倍ほどの差になるという

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