ハイブリッドクラウド環境で重要になるのは、データを処理・保存する場所の配置転換です。前回は、ワークフローの改善について説明しましたが、データが求める即応性と多様性に対応したストレージシステムを最適な場所に配置することが必要となります。
パブリッククラウドの導入をきっかけにハイブリッド化を進めるとき、またはハイブリッドクラウドの構築後に想定通りの効果が上がらないときはオンプレミス環境も含めたストレージ戦略の見直しが重要です。その際に、オブジェクトストレージが有効な手段の一つになります。
オブジェクトストレージは、長期に保管されているデータへのオンラインアクセスが可能な技術を備え、非構造化データとの親和性の高さが特徴です。バックアップや災害対策の仕組みを大きく変えることができます。
既にクラウドサービスを提供するデータセンターなどで導入が進んでいます。ワークフローによっては、オンプレミス環境でも導入や運用のコストをパブリッククラウドより抑えられる可能性があります。データリテンション(データ保持)の期間が長くなり、デジタルデータを永久保存する方針に切り替える企業も見られます。
特にインターネット時代のコンテンツ業者にとって、アーカイブは“いつか必要になる資産”から“頻繁に必要になる資産”に変わってきており、コンテンツの再利用・再配信は当たり前の時代になっています。オブジェクトストレージは、このようなインターネット時代に出現したストレージシステムです、
今回は、オブジェクトストレージに関する3つの疑問を考察します。
- なぜオブジェクトストレージが必要なのか
- イレイジャーコーディングとは何か
- なぜ安価に導入できるのか
なぜオブジェクトストレージが必要なのか
データの共有や管理をするストレージシステムとしては、NAS(Network Attached Storage)が主力です。ディレクトリ(データ階層)構造を持ち、ファイルやフォルダ単位でデータを管理します。しかしながら、データが加速度的に増加する中、より柔軟にシステムを拡張したり、データを共有したりできる、データ管理システムが必要となってきているのです。
オブジェクトストレージは、階層構造を持たないデータ保管方式を取ります。各データ(オブジェクト)を同じレベルで、大きなプールに放り込んでおくイメージになります。オブジェクトにはIDが付与され、メタデータとともに保存されます。メタデータには、オブジェクト(動画など)の特徴(撮影日時・場所、出演者、あらすじなど)を示せます。メタデータを作成するために、人工知能(AI)で映像を認識してデータを生成する取り組みもあります。コンテンツデータの検索や分類、分析、再利用を前提に、非構造化データの保存先として最適です。フォルダなどの階層構造による横の壁を持たず、どのような属性のデータも均一に見渡せることにより、これまで不可能であったさまざまな条件によるデータの検索、比較、出し入れが可能になるのです。
オブジェクトストレージの実例としては、ウエスタンデジタルがオールインワンシステム「ActiveScale」を提供しています。ラック当たり588台のHDDを搭載し、物理容量で7ペタバイト(PB)になります。Amazon S3プロトコルでのアクセスを基本とすることで、HTTPプロトコルを用いてモバイルデバイスからデータのアップロード/ダウンロードが可能です。データにURLを割り当てて、外部にも公開できるインターネット時代のストレージシステムです。