
Salesforce 最高製品責任者のBret Taylor氏。Facebookの最高技術責任者として同社のモバイルアプリを成功させた後、Quipを創業。QuipをSalesforceが買収したことで入社した。それまではQuipの最高経営責任者を務めたが、2017年末に現職へ昇進し、全製品を見る立場となった
米Salesforce.comが2016年に発表した人工知能(AI)機能の「Einstein」が音声と合体する。「音声はモバイルの次のインターフェース」と話すのは、同社の最高製品責任者を務めるBret Taylor氏だ。同社が9月28日まで米国サンフランシスコで開催している年次カンファレンス「Dreamforce 2018」で発表した。
SalesforceがDreamforceで発表した「Einstein Voice」は、音声インターフェースを使って、Salesforceのシステムとやり取りするもの。Dreamforce会場のデモではiPhoneを使い、「Hey Siri」と呼びかけてSiriを立ち上げ、「Daily Briefing」と話すと、Salesforceにあるその日のスケジュールを読み上げる。
ミーティングの相手とのメールの内容から、セールスのクロージングが近いことを予測して助言するなどのことも行う。デモで使用したのはスマートフォンだったが、スマートスピーカーでも実現するという。なお、Salesforceは会期前日にAppleとの戦略的提携を発表し、SalesforceアプリケーションのiOS最適化などを行うとしている。

SiriにDaily Briefingを頼むと、Salesforceのシステムからその日のスケジュールを読み上げた
ミーティング終了後の入力も音声で行う。ここではSalesforceのモバイルアプリから、音声入力ボタンを押してミーティングの内容(相手の会社名と名前、「マルチチャネルエンゲージ計画について話した」など)を伝え、次のミーティングの予定を入れたり、ステージを変更したり、あるいは金額やクロージングの日程を変更するといった指示を出すと、Salesforce側にアップデートされる。
ここでは、単なる音声認識ではなく、例えば「次の金曜日」というと、その週の金曜日にスケジュールを組むなど、自然言語処理が動いている。

Einstein Voice Assistのデモ。音声で読み上げると、Einsteinが自然言語処理によりシステムに加える変更を提案してくれる
Einstein Voiceには、上記のデモの「Einstein Voice Assistance」に加え、「Einstein Voice Bot」も用意される。音声技術を顧客と開発者向けにパッケージしたもので、ユーザーはSalesforceの情報にアクセスできる自社ブランドの音声ボットを構築できる。音声アシスタントはGoogle AssistantとAmazon Alexaに対応する。米国のスマートスピーカー数は5000万台と言われている。

Salesforce チーフサイエンティストのRichard Socher氏
これまでのGUIやタッチ(モバイル)に続き、「次のインターフェースは音声だ」とTaylor氏。「AmazonやAppleが顧客の期待を高めた。音声など優れた顧客体験を提供しなければならない」と続けた。Salesforceでチーフサイエンティストを務め、Einstein開発を主導するRichard Socher氏も、「自然言語は自然な人間の行為。これを利用して、生産性を大きく改善できる」と述べる。
これらは現時点では英語のみとなっており、一般提供は2019年の予定だ。
Socher氏によると、今回発表した音声機能は、ほんの初期段階に過ぎないという。音声による検索や操作などはコンシューマーを中心に普及しているが、「難しく、しかし面白いのは、背後にある自然言語処理だ」という。Einsteinの自然言語処理機能では、顧客固有の専門用語の習得などを可能にしていき、最終的にCRM(顧客関係管理)に統合されるとした。
Einsteinは現在、発見・予測・レコメンド・自動化――の主に4分野でSalesforceユーザーを支援している。イベント中、Einsteinの導入企業の成果も紹介された。例えば、アシックスは全ブランド合計の売り上げを16%改善し、US Bankはリードコンバージョン率が2.35倍に改善したという。
(取材協力:セールスフォース・ドットコム)