ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」

第1回:中立の立場でトレンドと真理を見る--ITアナリストの仕事とは?

取材・構成=翁長潤、國谷武史 2018年10月03日 06時00分

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 ITベンダーでもユーザー企業でもない第三者の立場からITマーケットを分析するITアナリストは、中立の立場から変化の激しいIT動向を冷静に捉え、的確なアドバイスを提供する。本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナー ジャパンのエグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく。

 第1回は、ITアナリストの日々の仕事についてリサーチ&アドバイザリ部門 アプリケーションズ マネージング バイス プレジデントである堀内秀明氏に聞く。

ガートナーとは?

1979年に創設されたGartnerは世界有数のリサーチ&アドバイザリ企業。世界100カ国に拠点を持ち、2000人以上のエキスパートが在籍する。ガートナー ジャパンは1995年に設立され、日本企業が日々直面する問題に対して正しい判断を下せるよう、テクノロジの観点をからの知見をさまざまなサービスとして提供している。


アナリストとコンサルタントの違い

長谷島眞時氏。1976年ソニー入社。Sony Electronicsで約10年にわたり米国や英国の事業を担当し、2008年6月ソニー 業務執行役員シニアバイスプレジデントに就任し、同社のIT戦略を指揮した。2012年2月の退任後、2012年3月よりガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント エグゼクティブパートナー。この連載では元ユーザー企業のCIOで現在は企業のCIOに対してアドバイスしている立場としてITアナリストに鋭く切り込む
長谷島眞時氏。1976年ソニー入社。Sony Electronicsで約10年にわたり米国や英国の事業を担当し、2008年6月ソニー 業務執行役員シニアバイスプレジデントに就任し、同社のIT戦略を指揮した。2012年2月の退任後、2012年3月よりガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント エグゼクティブパートナー。この連載では元ユーザー企業のCIOで現在は企業のCIOに対してアドバイスしている立場としてITアナリストに鋭く切り込む

長谷島:ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門はどんなところですか。リサーチとは具体的に何を指すのでしょうか。

堀内:まず、「リサーチサービスを使う」ということ自体がまだ一般的になっていないと思います。アナリストというと、テレビに登場する証券アナリストを思い浮かべる人が多いでしょう。当社のリサーチサービスをご利用中の顧客からもアナリストではなく、「コンサルタント」と言われることがあります。(ソニー時代に)長谷島さんはコンサルティングを使われたことはありますか。

長谷島:あります。ユーザー企業は、自分たちで考えるべきことでも、コンサルタントに手伝ってもらうことが多いのではないでしょうか。日本の場合、特にIT管理部門での依存度は高いという印象です。その点でアナリストとコンサルタントはどう違うのでしょうか。

堀内:幾つか切り口があります。コンサルタントは、ある一定期間の中で特定の顧客の特定の課題について、解決策を示してくれます。一方、私たちアナリストは、専門領域を持って、その領域を継続的に調査し、市場トレンドに従って、関連する情報の提供や“ベストプラクティス”を極力多くの顧客に役立つ形で提供するという違いがありますね。加えて、リサーチサービスは、CIOやアプリケーション領域に責任を持つITリーダー、あるいはベンダーのマーケティング責任者など、顧客企業内の各ロールを意識した個人向けのサービスで、顧客はガートナーと年間契約を結んだ上で、レポートを閲覧したり、アナリストへ問い合わせたりできます。

長谷島:意思決定の肩代わりはしないが、意思決定に必要なタイムリーで鮮度の高い情報を提供すると理解した方が分かりやすいですね。リサーチする領域をどう決めているのでしょうか。また、リサーチ領域はどのくらいあるのですか。

堀内:ガートナー・グローバルでは、ITだけではなく、人事・財務・法務・マーケティングなど、幅広いリサーチ領域を持っていますが、日本国内のユーザー向けという見方では、大きく「アプリケーション」「インフラとセキュリティ」「ITの調達とマネジメント」の3つにチームに分かれて調査を行っています。また、ベンダーやサービスプロバイダー向けに特定のIT市場のシェアや予測データに関して調査を行うアナリストやCIO向けのアドバイスを行うアナリストも存在します。

長谷島:注力するテーマはどのように決めているのでしょうか。

堀内秀明氏。ガートナー ジャパン マネージング バイス プレジデントとして日本のアプリケーションに関するアナリストのチームを統括。専門はデータの分析や活用に関するベストプラクティスとビジネスインテリジェンス(BI)のアドバイザリ
堀内秀明氏。ガートナー ジャパン マネージング バイス プレジデントとして日本のアプリケーションに関するアナリストのチームを統括。専門はデータの分析や活用に関するベストプラクティスとビジネスインテリジェンス(BI)のアドバイザリ

堀内:私はチームマネージャーという立場ですが、他にも「アジェンダマネージャー」というリーダーがいます。アジェンダマネージャーは、どういう領域のリサーチをすればいいかを決め、道筋を示す役割を担っています。毎年秋から冬にかけて、翌年のリサーチでは何に注力するのかを決定します。もちろん、定期的に見直しながら新たなトレンドが出てきたら方針を変えることもあります。

長谷島:これだけテクノロジの進化が早いと、臨機応変な対応が必要ですね。

堀内:テクノロジだけでなく、ユーザー企業やベンダーの興味・関心が高い動向や制度的なインパクトがある領域も含まれます。例えば、日本では「働き方改革」が近年注目されていますが、この流れは日本独自なので、世界のアジェンダにはありません。しかし、盛り上がっている日本では、リサーチをしないといけない分野です。

長谷島:日本での働き方改革で面白い点は、テクノロジのサポートが前提条件になっていることだと思います。労働制度の変更や見直しだけでなく、テクノロジとのペアで考えることからITのリサーチ領域となっていますね。

堀内:働き方改革の背景には、労働時間や残業を減らすという時間短縮の面があります。ITの得意技の一つに効率化がありますが、時間短縮という点ではこれらが密に関係する部分もあります。

長谷島:日本の働き方の考え方は、少子高齢化社会を考える上で重要です。多くの会社がITを組み合わせて働き方改革へ取り組んでいるのは、そこに特徴があるわけですね。

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