組織の最高情報責任者(CIO)にとって、この10年はよい10年だった。10年前には、コンシューマー向け機器のビジネス利用とシャドーITが進み、CIOの仕事は崩壊すると言われていた。しかし実際には、企業が新技術や破壊的改革をもたらすビジネスモデル、次々と変わる顧客の要求への対応を迫られる中、IT部門を率いる人間の役割はますます重要になっている。だが、10年後のCIOには何が求められるのだろうか。この記事では、5人の専門家に、これからのデジタルリーダーのあるべき姿を聞く。
1.製品開発に取り組むテクノロジスト
運輸会社Addison LeeのCIO、Ian Cohen氏は、「今は先端技術に関わるのに絶好の時期だ」と述べている。「ギークにとって、今ほどギークであることが面白い時期はない」
Cohen氏は、以前の技術者はビジネスの言葉を覚えるように命じられ、その力も過小評価されていたものだったと話す。しかし今日では、ビジネスの知識とセンスを持ち、開発フレームワークだけでなくバランスシートにも詳しい、今まではいなかったタイプの技術者が登場してきている。これはITプロフェッショナルにとって大きなチャンスだが、誰もがビジネス重視のCIOに向いているわけではない、とCohen氏は言う。
「一部のCIOは厳しい経験をすることになるだろう。これは単に、IT部門のリーダーになるまでの経歴によるものだ」と同氏は述べ、これまでのITリーダーはシステムの運用を重視してきたと指摘した。「今後もCIOの役割を続けて行くのであれば、自分を変えることができるのか、今自分が持っているスキルに十分な賞味期限が残っているかを問われることになる」
今後は、一部のCIOが最高執行責任者のような役割を指向するようになる一方で、CTOのように、これまで技術の応用を主な仕事としてキャリアを積んできたCIOは、顧客体験の改善を担う方向に進んでいくという。
Cohen氏は、「多くの場合、このタイプのリーダーは顧客や製品に関する取り組みを重視しており、将来的には最高製品責任者と最高技術責任者を兼ねるような役割を果たすことになるだろう」と述べている。
2.事業部門の統括マネージャー
電子機器販売業者RS Componentsの最高デジタル・技術・イノベーション責任者Alex von Schirmeister氏は、同氏が言うビジネス重視のCIOと、システム重視のITリーダーの差が広がっていくことは明らかだと述べている。Cohen氏と同じく、同氏も、将来生き残ることができるのはビジネス重視のCIOだけだと考えている。
「もはやCIOの仕事は、大きなブロックからなるアーキテクチャマップや、人間同士のコミュニケーションを線で表した図では表現できなくなっている。5年後、10年後のCIOは、今よりもずっと流動的な環境に置かれ、その環境の中にある、あらゆるものを素早く再構築しながら、常に顧客の要求を満たし続ける能力を求められるようになる」とvon Schirmeister氏は述べている。