Expedia Groupは、世界最大級のオンライン旅行会社(Online Travel Agency:OTA)として、世界75カ国以上で旅行関連の事業を展開している。旅行予約サイト「Expedia」、ホテル予約サイト「Hotels.com」、ホテル料金比較サイト「trivago」、バケーションレンタルサイト「HomeAway」などのサービスを提供している。
2018年3月31日時点で、旅行取扱総額は年間920億ドル(約10兆1000億円)、売上高は104億ドル(約1兆1000億円)。月間サイト訪問数は2017年時点で約7億、宿泊施設数は約200万件となっている。
エクスペディア・ジャパン 代表 石井恵三氏
Microsoftの旅行予約システム部門としての設立に端を発する同社は、「テクノロジの力で旅行を変える」という理念の下、OTAのパイオニアとして旅行業界の改革を目指している。テクノロジへの投資額は年間14億ドル(約1500億円)、関連人員は5500人以上という。
近年は、「Mobile(モバイル)」「Messaging(メッセージング)」「Machine Learning(機械学習)」の頭文字を取った「3M」戦略を掲げる。スマートフォンアプリの強化とモバイルコンテンツの拡充、LINEやチャットのサポート、人工知能(AI)の開発と実用化などを施策として挙げる。
「特に最近はスマートフォンからの利用が増えている。移動中や就寝前のちょっとした時間で旅行を予約する人が多い。国内旅行が人気で、まだまだ成長する余地が残っている」(エクスペディア・ジャパン 代表 石井恵三氏)
2017年4月には、シンガポールに「エクスペディア・イノベーション・ラボ」を開設。米国シアトル、英国ロンドンに続く、3つ目の研究施設でアジア初となる。被験者の頬と眉に小型センサを取り付け顔の筋肉の小さな動きを記録する「筋電図記録技術(EMG)」と、眼球の動きを追いかける「視標追跡技術」を利用し、特にアジア人の旅行客がどのようにエクスペディアのウェブサイトやモバイルアプリを利用しているかを分析する。
イノベーション・ラボでの実験の様子(出典:エクスペディア・ジャパン)
機械学習を用いてAIに旅行客の動向を学ばせ、サービスを利用する際にどのような問題を感じているかを発見する。例えば、旅行客がウェブサイトやモバイルアプリを用いて旅行情報を検索したり、予約したりする過程において、どこで「楽しさ」や「イライラ」を感じているかを特定できるという。
「エクスペディアでホテルを予約するとき、『事前払い』と『事後払い』という2つの支払い方法があった。宿泊費を旅行の前と後のどちらで支払うかというものだが、『事後払い』という表現が旅行客に理解されていないと分析で明らかになった。これを『ホテル払い』に変更することで利用率が向上した」(石井氏)
また、ウェブサイトに掲載する情報の一部をAIで作成する取り組みも進めている。漢字やカタカナの使用頻度や絵文字・記号の使い方など、これまで勘や経験を頼りにしてきたノウハウやパターンを学習させ、クリック率の改善などに役立てている。「ゆくゆくは旅行客によって動的に表現を変えられるようにしたい」という。
将来への投資も続けている。ホテルの客室を紹介するツールとして仮想現実(VR)を活用し、旅行客からのクレームを減らそうと試みる。既にラスベガスで実験を始めている。LINEとの協業も強化し、チャットアプリ経由でコールセンターにチャットできるサービスも提供している。
「LINEであれば、ホテルのWi-Fiを用いて無料でコールセンターに問い合わせられる。国際電話を掛ける必要がないので、海外旅行客にも安心して使ってもらえる」(石井氏)