中国ビジネス四方山話

顔認証や信用スコアなどで広がる中国のネット中古取引

山谷剛史 2018年10月10日 06時00分

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 中国でネット経由の中古販売が普及しようとしている。ヘビーなネットユーザーには阿里巴巴(Alibaba)の「閑魚(Xianyu)」というサービスが知られているし、そうでない人の間でも、中国全土の主要ショッピングモールに「愛回収(Aihuishou)」というスマートフォン買い取りサービスが展開していることで、中古販売の存在が知られるようになった。

 これまで、中国で日本のような信頼の上で成り立つような、一定規模以上の中古販売は存在しなかった。例えば、PCやスマートフォンなどのデジタル製品の中古市場は存在しているが、売られている商品は日本で言えば保証なしのジャンク製品といったところで、購入後に何かしらの問題が発生しても店はろくに対応をしなかった。筆者個人の経験では、中古PC市場で中古ノートPCを何度か購入したが、バッテリがほぼ消耗しきっていることはもちろん、OSもプリインストール版ではなく海賊版が入っていることがよくあり、再度買う羽目になったことも。スマートフォンにおいてはニセモノをつかまされるリスクもある。

 またオンラインにおいては、ECサイトの「淘宝網(Taobao)」も、ヤフーオークションやメルカリのような消費者間取引(CtoC)のサービスだが、実質販売力がある企業が新品を販売するサイトとなっている。淘宝網ですら、実績がある店舗としかやり取りしたくなく、実績のない個人との中古取引となろうものなら、どんなものが届くか分からないといったリスクをはらんでいて、とても利用したくなるような状況ではなかった。拍拍網(paipai.com)という中古取引サイトもあるが、これまで目立つシェアは取れなかった。

 結局のところ、中国においては見ず知らずの個人間において信用がない前提で、仲介人なしに使用済みの製品を売買することなどできなかった。そんな中古売買に、EC大手の阿里巴巴や騰訊(Tencent)、京東(JD)が参入した。

 閑魚は、買い取り時に阿里巴巴グループの関連会社であるアントフィナンシャルの支付宝(Alipay)が提供する「芝麻信用(Zhima Credit)」を活用する。さらに芝麻信用の信用スコアに加え、電子身分証に相当する閑魚専用の「電子通行証」を発行し、より信用度を高めようとしている。

 芝麻信用の信用スコアはクレジットカードの信用情報のようなものだ。信用スコアが一定値を超えた場合で商品買い取りを申し込むと、まず支付宝に買い取り金額が振り込まれ、それから買い取り商品を送ることができる。例えば、スマートフォンを買い替える場合、あらかじめ買い取りを申し込んで振り込まれた後、すぐに別のスマートフォンを購入し、データを移行させてから買い取り商品を配送することが可能となる。また、「信用速売」サービスで市場買い取り価格より3割高い買い取りを保証するなど、信用スコアを用いた買い取り客を増やそうとしている。

 信用スコアを高めることによってできることが増えるのと同様、電子通行証を発行することで買い取り商品の着払い化や淘宝網でのショップオープンの優遇措置、ホテルでのチェックインの簡略化など、さまざまな特典を得られる。そこが強みだ。

 阿里巴巴の閑魚に対し、くすぶっているのが騰訊の「転転(Zhuanzhuan)」だ。ここでの買い取りでは、公安の実名認証システムを利用。身分証の画像を提供するのに加え、顔認証システムを利用して登録するのだが、登録の手間に対する見返りが低いと利用者からも辛口だ。転転は販売者の実名認証に加え、富士康(Foxconn)と提携し、富士康がスマートフォン製品の製品チェックを行い、信用度を高める。

 第2位のECサイトである京東の中古販売においては、京東内の「拍拍二手(Paipai second-hand)」というサイトが行っている。これはいわば、京東のアウトレット的な製品販売サイトといっていい。商品は京東内での箱崩れやメーカーの在庫一掃、返品商品を京東自体が検証。ランク付けし、品質保証を付けて販売しているものだ。さらにそれ以外の個人から買い取った商品についても販売するが、これには京東の信用スコアのある信用システム「小白信用」で認証されたユーザーが出品する。

 阿里巴巴や京東の買い取りサービスにおいては、買い取りの際にだまそうとすれば、グループ全体のサービスが利用できなくなるリスクがある。信用システムがない騰訊においても、信用されなければ公安の実名認証システムを利用しているため、ただでは済まないだろう。EC企業やネット大手が何らかの信用システムを中古買い取りに導入することにより、まじめにサービスを利用する人が得する状況となってきた。ひいてはこうした企業のPR次第で、中古市場が認知・利用されていくかもしれない。

 なお、新しい中古取引サービスは、1990年代生まれなどの若い世代が特に利用しているそうだ。中古取引についてネガティブなイメージを累積していない若い層で利用されている。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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