IDC Japanは10月10日、エッジコンピューティング市場に関する調査結果を発表した。同調査では特にエッジコンピューティングのプラットフォームレイヤーと通信レイヤーに焦点を合わせて分析している。
これによると、モノのインターネット(IoT)技術で広域に分散したモノや人を情報通信技術で連携させ、社会やビジネスの効率を高めるためには、IoTデバイスの近くでコンピューティング処理を行うエッジコンピューティングが必要であるという認識が広がりつつある。
また最近は、IoTデバイスで収集した膨大なデータ(ビッグデータ)を人工知能(AI)などで分析する取り組みが増加している。例えば、自動車分野では、車の周囲の状況を把握する車載センサや運転者の表情を分析する車内のカメラなどから収集する膨大なデータを分析し、運転支援や自動運転などに活用する取り組みが行われている。
エッジコンピューティング活用の主なメリットとして、通信コストの削減、接続状態が良くない環境でのコンピューティング機能の利用、ネットワーク遅延の減少、セキュリティ/プライバシーの向上、非力なデバイスからの高負荷処理のオフロードなどが挙げられる。
今回の調査では、エッジコンピューティングに取り組むサービス事業者への取材などから、特に通信コストの削減を含むIoT関連のビッグデータ処理(データ収集、フィルタリング、加工、分析、蓄積など)の経済性向上を目的に、エッジコンピューティングを活用したいと考える企業が増えていることが分かった。その背景として、これらの企業にとってビッグデータ処理にかかるコストが大きな課題になっていることが挙げられる。
ビッグデータの処理については、これまで主にクラウドで行うのが有効であると考えられてきた。しかし、メッセージング、ストリームデータ処理、イベント処理、データレイク、機械学習(ML)などクラウドと同様のビッグデータ処理機能をエッジにも持たせ、エッジとクラウドで処理を分担することによって、通信やデータ保管などデータ処理に関連するコストを低減できる可能性がある(下図参照)。
図:エッジとクラウドで分担するデータ処理(出典:IDC Japan)
主なクラウドサービス事業者は、このようなデータ処理機能を持つプラットフォームをエッジに展開する取り組みを進めている。また、コンテンツ配信網(CDN)事業者も、広域ネットワーク内で同様のデータ処理を行うプラットフォームの配備に取り組んでいる。これらの先行するエッジプラットフォームプロバイダーには、商用版を早期に市場投入することによって企業のイノベーションを支援し、その経験をもとにさらに高度なイノベーションプラットフォームを開発する狙いがある。
一方、国内通信事業者も、自社の広域ネットワーク内へのエッジコンピューティング環境の配備を検討している。しかし、通信事業者ではユースケースやビジネスモデルの展望を描く難しさなどから、その商用化には時間を要するとIDC Japanでは見ている。
IoTのビッグデータ処理では、エッジデバイスとクラウド間の通信とデータ処理を、遅滞なく効率的に行うことが求められる。