日立、AIを活用した石油化学プラント向け予兆診断サービスを提供開始

NO BUDGET

2018-10-12 06:00

 日立製作所は、石油化学プラント向けの予兆診断サービス「ARTiMo」の提供を開始した。

 同サービスは、人工知能(AI)を活用してプラントの運転状態を自動的に分類・解析することで、故障の前兆である状態変化や異常発生をリアルタイムに検知する。日立が昭和電工と共同で、同社の大分コンビナート内のエチレンプラントで行ってきた実証を通じて開発・実用化したもので、2018年10月から同プラントにおいて実業務での運用を開始した。

昭和電工のエチレンプラント分解炉の外観写真(左)と、「ARTiMo」の監視システム画面(右)
昭和電工のエチレンプラント分解炉の外観写真(左)と、「ARTiMo」の監視システム画面(右)

 異常を検知する仕組みは、プラントの運転データを収集し、AIの一種のデータクラスタリング技術であるART(適応共鳴理論)を用いて解析するもの。これにより、一般的な予測モデルを用いた予兆診断システムや人の判断では検知が困難だった、プラントを構成する機器や設備などの複合要因による異常を早期に検知することが可能となる。

「ARTiMo」における異常検知方法
「ARTiMo」における異常検知方法

 ARTを用いた解析エンジンを実装することで、過去の正常なプラントの機器・設備の運転データ(温度や圧力、水位、流量など)を事前学習させ、予兆診断の基準となるデータの相関関係を分類し、正常データのカテゴリを自動生成する。その上で、実際のプラント運転時に取得した新規データを自動分類し、正常カテゴリと比較することにより、運転状態が正常かどうかを診断する。また、新たなデータのカテゴリが発生した場合には、オペレーターにアラートを発信して判断を促す。

 同サービスには、日立の「Lumada」のAI技術と、発電や化学分野向けのプラント設計やプロセス制御の豊富なノウハウを用いている。昭和電工大分コンビナートのエチレンプラントに今回の技術を適用したところ、これまで把握が難しかったプラントの故障要因となるコーキングの発生条件を解析し、熟練オペレーターに依存せず予兆検知できることを確認している。コーキングとはナフサ(粗製ガソリン)などの分解反応により固体(コーク)が配管内などに付着する現象。

 昭和電工では、「ARTiMo」の本格運用により、プラントの故障回避に向けて、コーキングの発生状況に応じた運転対処方法やコーキング発生抑制方法の確立を目指す。

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