本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Palo Alto NetworksのNikesh Arora会長兼CEOと、KPMGコンサルティングの田口篤パートナーの発言を紹介する。
「デジタル変革にはセキュリティ変革が不可欠だ」
(米Palo Alto Networks Nikesh Arora 会長兼CEO)
米Palo Alto NetworksのNikesh Arora会長 兼 CEO
パロアルトネットワークスが先頃、顧客およびパートナー企業を対象とした年次イベント「Palo Alto Networks Day 2018」を都内ホテルで開催した。冒頭の発言は同イベントの基調講演で、米Palo Alto Networksの会長 兼 最高経営責任者(CEO)に6月6日付けで就任したNikesh Arora(ニケシュ・アローラ)氏が語ったものである。
Arora氏といえば、米Googleなどを経て2014年に孫正義社長の後継候補としてソフトバンクに入り、代表取締役副社長を務めるとともに初年度の報酬が165億円と巨額だったことも話題になった。しかし、孫氏が社長続投の意思を固めたことなどを理由に、2016年6月に退任した。従って、約2年ぶりに企業経営の表舞台に戻り、現職として今回初めて日本で公の場に姿を見せた形だ。
それだけに、特にArora氏の第一声が注目されたが、「私はソフトバンクにいた2年間住んでいた日本が大好きだ。Palo Alto Networksで仕事をすることにしたのは、この会社が日本市場にも強くコミットしていることも大事な要因だった。そして、日本をはじめグローバルで、サイバー攻撃に立ち向かって人間社会の安全・安心を実現するというミッションに向けて、私も注力していきたいと考えている」と語り、会場を沸かせた。
Palo Alto Networksの経営トップとしては、「現職に就任後、これまでおよそ100日の間、世界中の当社顧客を訪問し、さまざまな要望を聞いた」と話し始めた。そうした中で、意を強くしたのが冒頭の発言にある「デジタル変革にはセキュリティ変革が不可欠」ということだ。
では、そのセキュリティ変革をどう進めていくのか。この課題に対してArora氏が力説したのは、「まずはセキュリティ業界において、さまざまなソリューションを提供しているベンダーが密接に連携し、業界を挙げてサイバー攻撃に立ち向かっていく態勢を作っていく必要がある」との提案だ。
実は、この提案はArora氏が突然言い出したのではなく、Palo Alto Networksがこのところ注力している「セキュリティプラットフォーム」という考え方に基づいている。このプラットフォームは、図に示すように、ネットワーク、エンドポイント、クラウドといったあらゆる領域のセキュリティに対応。最大のポイントは、パートナー企業や顧客企業もこのプラットフォームでアプリケーションを開発でき、クラウドサービス化できる「アプリケーションフレームワーク」という環境を設けていることである(関連記事)。
Arora氏はこの「業界を挙げてのセキュリティ変革」にやりがいを感じたのではないか。同氏のスピーチを聞いてそんな風に感じた。
図:Palo Alto Networksのセキュリティプラットフォーム