情報セキュリティ産業の専門家は、中国の情報機関員が逮捕されたことで、今後数カ月間、中国のハッキング集団からのサイバー攻撃が増加する可能性があると指摘している。
こうした警告が発せられたのは、米司法省が中国の防諜・外国諜報を担当する機関である国家安全部の高官Yanjun Xu氏の身柄引き渡しと逮捕・起訴を発表した、米国時間10月10日のことだ。
Xu氏の逮捕容疑はハッキングではなく、米国の航空宇宙関連企業の専門家数人を中国へ招聘し、経済スパイ行為と企業秘密の窃取を行おうとしたというものだ。
しかし、米国のサイバーセキュリティ企業Record Futureや謎の多い匿名組織Intrusion Truthのレポートによれば、国家安全部は中国のサイバー諜報活動を監督する政府機関だという。
米国のサイバーインテリジェンス企業CrowdStrikeの共同創業者であり最高技術責任者(CTO)を務めるDmitri Alperovitch氏は同日、「現在、国家安全部は、中国政府が関わるサイバー攻撃の大半に関与している中心的な政府機関であり、同機関が高度な経済スパイ能力を持っていることを示す侵入事例が複数観測されている」と述べている。
Alperovitch氏は、今回の逮捕が中国のハッカーからの報復を引き起こす可能性があると懸念しており、Facebookの最高セキュリティ責任者(CSO)Alex Stamos氏やその他の専門家も同様の意見を表明している。
Looks like the Obama-Xi deal is off. Not surprising, considering we started a trade war with them.
— Alex Stamos (@alexstamos) October 10, 2018
Buckle up, security teams for mid-sized industrial companies with Chinese competitors and IP-heavy startups! https://t.co/ItyERjCxj7
米国企業は長年にわたって中国政府の後援を受けたハッカーからセキュリティ侵害を受けており、そこで盗まれた独自技術が、不思議にも中国企業の手に渡っている。
米国と中国は、2015年の秋にオバマ米大統領と習近平中国国家主席が首脳会談を行った際、知的財産を狙ったあらゆるサイバー攻撃を止めることで合意し、協定に署名している。
2016年6月にFireEyeが発表したレポートには、この協定が結ばれたあと、中国による知的財産を狙ったサイバー攻撃は大きく縮小し、同国がすべての大規模攻撃を停止したと見られると記述されている。
しかし、トランプ政権になって両国の外交関係が悪化し、貿易戦争が徐々に進行するにつれて、この協定は非公式に破棄されたようだ。
トランプ政権は2018年3月に、中国がオバマ元大統領と習近平国家主席の間で結ばれた合意に違反していると非難した。米財務省はその際、協定締結後に実施された中国によるサイバー攻撃を詳細に説明した、215ページの調査報告書を発表している。