「Intelと言うと、PCのCPUのイメージで見られることが多いが、現在はデータ処理の会社へ軸足を移している。2018年末から2019年初頭ごろには、サーバやストレージ、ネットワークなどのデータセンター関連の売り上げが50%を超える。AI(人工知能)市場にも参入しており、Xeonの売り上げはAI用途だけで10億ドルを突破する――こう語るのは、Intelでコア&ビジュアルコンピューティング事業本部副社長兼デベロッパー・リレーションズ事業部長を務めるMorris Beton(モリス・ビートン)氏だ。
Intelが開催した開発者向け会議「インテル デベロッパー・カンファレンス 2018」に合わせて来日した同氏が、直近のIntelの取り組みについて説明し、「AI領域などのデータ処理分野で大きな進ちょくがある」と述べた。
Intelでコア&ビジュアルコンピューティング事業本部副社長兼デベロッパー・リレーションズ事業部長を務めるMorris Beton氏
データを高速に分析するためのハードウェアとしてIntelは、CPU(Xeon)を中核に、CPUから処理をオフロードするアクセラレータとしてFPGA(Field Programmable Gate Array)や、ディープラーニング(深層学習)用プロセッサ「Nervana NNP(Neural Network Processor)」などを用意している。
CPUであるXeonの売り上げは、Intelの社内データによると、AI用途だけで10億ドルを突破する。FPGAの売り上げも年間10億ドルに達する。FPGAの事例の1つとして、MicrosoftはAzureにおいて2018年初めにAI処理のために米IntelのFPGAを購入した。この他に、金融業界やネットワーク領域でFPGAが使われている。一方、Nervana NNPは、ディープラーニングで用いるニューラルネットワークの処理に特化したプロセッサだ。ディープラーニングの学習用途などで一般的に使われているGPU(浮動小数点演算を高速に処理するメニーコアのプロセッサ)よりも効率が良いとしている。
画像認識アプリケーションの開発ツールキットを提供
開発者向けに、ソフトウェア領域にも注力している。AIを用いた画像認識アプリケーションを開発するSDK(ソフトウェア開発キット)として、2018年5月から「OpenVINO(Open Visual Inference & Neural Network Optimization)」を無償配布している。PythonとC/C++で使えるライブラリだ。
OpenVINOは、画像認識の推論(作成済みの判定モデルを用いた画像の判定/評価)において効果を発揮する。カメラにつないだエッジコンピュータ上で、歩行者が何人いるかをカメラ映像から判定したり、入場ゲートにおいて顔を認識したり、工場での目視の部品検査を自動化したり、といった使い方ができる。
OpenVINOの特徴は、大きく2つある。1つは、非力なエッジコンピュータでも高速に処理できるように、TensorFlowやCaffeといった一般的なディープラーニング用フレームワークで生成した学習済みの推論モデルを最適化して利用できることだ。OpenVINOの推論エンジン用に変換して使う。
もう1つは、開発した画像認識アプリケーションのコードを、共通のコードを用いながら、CPU、GPU、FPGA、Nervana NNPなどの複数のターゲットプラットフォーム向けにコンパイルできることだ。プロセッサに合わせてコードを書き分ける必要がないとしている。
OpenVINOを採用して効果を上げた事例としてBeton氏は、米GE Healthcareのケースを挙げる。CTスキャン画像を診断するアプリケーションをOpenVINOで開発し、Xeon搭載サーバ機で動作させた事例だ。1秒に596枚の画像を診断できるようになり、医療関係者のパフォーマンスが14倍に向上した。
開発者コミュニティーとの関係構築にも力を入れている。「http://software.intel.com」と呼ぶポータルサイトを運営し、AI、IoT、ハイパフォーマンスコンピューティングといったカテゴリ別にコンテンツをそろえ、年間で3000項目に変更を加えている。年間2000万人の開発者がサイトを訪問しているという。