MicrosoftがOpen Invention Network(OIN)に加盟し、同社の特許ポートフォリオを提供した結果、テクノロジ分野を取り巻く世界の状況は大きく変化することになった。オープンソースに関連するものすべてを敵視していた同社が今や、オープンソースを利用し、オープンソースに貢献するのみならず、6万件にものぼる同社の特許を他のOINメンバーに開放し、Linuxシステム上でロイヤリティフリーで利用できるようにしたのだ。さらに重要なのは、OINメンバーがパテントトロールから身を守るために同社の特許を利用できるようになるという点だ。
その本当に意味するところ
では、MicrosoftのOIN加盟が本当に意味するところを見てみることにしよう。
詳細を論じる前に、筆者は弁護士ではないという点に注意していただきたい。また筆者は、オープンソースソフトウェア関連の法的なニュースを扱うウェブサイトGroklawの編集者を務めていた旧友のPamela "PJ" Jones氏のようなパラリーガル(弁護士補助職)というわけでもない。しかし筆者はこの件について、知的財産(IP)に詳しい数多くの弁護士と話をしてきた。本記事の内容は、MicrosoftのOIN加盟が意味するところの核心とも言うべきものだ。ただし現実的な助言が必要だという場合には、IP分野に詳しい弁護士に相談するようにしてもらいたい。
まず、OINとの取り決めの対象となっているのは、Microsoftの特許すべて(そう、すべて)だ。Microsoftは自社の特許ポートフォリオ全体を、Linuxシステムなどを特許関連のリスクから保護することを目的としたOINのライセンス被許諾者に提供するのだ。同社は合計すると9万件の特許を有しているが、現在承認されているのは6万件のみであり、残りの3万件は米特許商標庁(USPTO)の承認待ちとなっている。このため、USPTOに出願中の特許は今回、提供されない。ただ同社によると、承認が得られ次第、これらも提供していく予定だという。
では例えば、MicrosoftのOIN加盟によって、FATやexFAT、VFATに関係する特許も提供対象となるのだろうか?Microsoftのコーポレートバイスプレジデント兼IPグループ主任法務顧問であるErich Andersen氏は、「『Linuxシステム』上で読み込める、当社の特許はすべて提供される」と回答している。
Linuxシステムとは何か?
OINの定義によると、LinuxシステムはLinuxカーネルのほかに、その他多くのオープンソースパッケージを含んでおり、これらは概してLinuxの一部と見なされている。
具体的には、OINは以下のように述べている。
「Linux System」とは、Linux環境を構成するコンポーネント(Linux Environment Component)、あるいはそういったコンポーネントの任意の組み合わせであり、各コンポーネントは(i)オープンソースライセンス(OSL)の下で、またはパブリックドメインとして一般利用が可能になっており(そしてそういったコンポーネントのソースコードの一般利用が可能になっており)、かつ(ii)Linuxカーネルとともに配布されている、あるいはLinuxカーネルとともに利用するために配布されているもの(もしくはLinuxカーネル自体)をいう。
とは言うものの、特許関連の企業コンソーシアムであるOINは、一般的にLinuxの一部だとは考えられていないその他のオープンソースプログラムも保護している。例を挙げると、Linux上で実行されるオープンソースソフトウェアも保護対象となる可能性がある。確信が持てない場合、IP分野の担当弁護士にOINの対象かどうかを確認してもらうのがよいだろう。