データ分析で従業員も顧客もハッピーになる世界--理想科学工業のプロジェクト

阿久津良和 2018年10月17日 06時00分

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 Teradataが10月14日から米国ラスベガスで開催中の年次イベント「Teradata Analytics Universe2018」は、次世代のアナリティクスカンファレンスと題して多彩なユーザー事例を交えた講演が行われている。本稿では日本からの事例セッションとして理想科学工業(RISO)における取り組み「Utilization of AI/optimization and simulation, for work restructuring」を紹介する。

 印刷機器の製造や販売などを手掛けるRISOは、1955年設立と長い歴史を持ち、デジタル印刷機のシェア60%を誇る。同社は、「Teradata Aster Analytics(Aster)」を活用して、プリンタの故障予測で顧客満足度を向上させるプロジェクトを実施した。講演したコーポレート本部 情報システム部 システム一課の庄司朋子は、「分析結果で従業員も顧客もハッピーになる世界」と説明する。

講演した理想科学工業 コーポレート本部 情報システム部 システム一課の庄司朋子氏
講演した理想科学工業 コーポレート本部 情報システム部 システム一課の庄司朋子氏

 RISOは、プリンタに内蔵したセンサから取得したデータを用いて、「修理のベストプラクティス」「離反顧客の検知」「コミュニケーションレポート」の3機能を実現した。この背景には、新規顧客を獲得するよりも、既存顧客を継続させた方がコストメリットにつながるとし、顧客先に向かうフィールドエンジニアや営業と顧客間の密接な関係性構築を目的としている。

 同プロジェクトでは、顧客先に設置されているプリンタで何らかの異常が発生すると、「Riso Remote Agent(RRA)」のサーバへデータが即時に送信され、オペレーターによる電話対応やフィールドエンジニアによる訪問が発生する仕組みだ。修理結果はタブレット経由でRRAサーバに保存し、蓄積した各種データを夜間に日本テラデータのサーバに転送する。さらに、Aster上でデータ分析を行った上でBIツールによる可視化したり、「Teradata AppCenter」を用いて開発分析担当者がデータを活用したりしている。

プロジェクトの概要
プロジェクトの概要

 開発に要した期間は約6カ月で、データソースは過去の売り上げや修理報告書などを含む35種類に上る。これらのデータを数値に置き換えると1億行のログに相当し、夜間バッチで、500ジョブ×1000のワークファイルで処理を行っている。一見すると工数が掛かりそうだが、RISOでは「Asterの分析関数が優れていたため、短期間の開発に成功した」(庄司氏)という。具体的には、118のファンクション(機能)を用いて、上述の3機能の他に、16のレポートや27のアプリケーションの開発に成功している。

 プロジェクトの当初は、新人のフィールドエンジニアの品質向上を目指すものだった。だが運用してみると、「営業やフィールドエンジニア以外にも、障害対策情報を部品作成に生かす品質管理部門、開発本部は品質改善項目・要素開発に用いるなど、各部署がデータを活用している」(庄司氏)とのこと。プロジェクトでは「Aster Analytics」のファンクションとして、文章からトークンを抽出する「Texttokenizer」や、単純ベイズ分類アルゴリズムを用いる「Naive bayes text classifier」を使用している。

 利用場面の説明はなかったが、エラー発生時に必要な部品や推奨行動を提示するシステムに用いるフリーキーワードや、顧客との会話を保存して珍しいケースのトラブルに対応するためのデータベースに用いているようだ。

 庄司氏は、「現在も各部署でPoC(概念実証)を行っているが、自然言語処理を用いないと対応できないケースもある。(聴講者が外国人のため)日本語は空白がない文章になるため、単語を区切る処理が必要。この精度が高まらないと自然言語処理能力も向上しないだろう」と説明した。

 プロジェクトに対する課題だが、機能要件分野では、現状で不足する状況データの取得にはセンサの追加が必要となるものの、製造業は原価管理が厳しいだけに、「有用性を分析しながら検討する」(庄司氏)とした。非機能要件分野では、「ジョブ管理をExcelで行っている。このあたりの自動化も日本テラデータと相談したい」(同)という。近年の日本テラデータは、コンサルティング業務に注力しているため、後者については改善の兆しが見えることだろう。

 なお、このプロジェクトの主目的に挙げた“ハッピー”だが、利用者へのヒアリング結果をGoogle Natural Languageで分析したところ、41対142で、ポジティブなコメントが多かったという。また、故障時のダウンタイムは7%の改善にとどまり、庄司氏は「分析プロジェクトは(現状に合わせて)アルゴリズムを作り替えないと“幸せ”が続かない。今後も定期的な見直しを行う」と改善目標を語った。

(取材協力:日本テラデータ)

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