海外コメンタリー

エッジコンピューティングの今を知る(前編)--次なるIT変革の潮流 - (page 3)

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2018-12-10 06:30

David Linthicum氏(Deloitte Consultingのクラウド戦略最高責任者)

 「エッジ(というソリューション)では、コンピュートシステムとストレージシステムも、処理対象データの源となるコンポーネントやデバイス、アプリケーション、人間にできるだけ近いエッジ部分に配置される。その目的は処理上のレイテンシを排除することにある。というのも、データをネットワークのエッジ部分から中央の処理システムに送り、処理の後でエッジに送り返する必要などないためだ。(中略)Cisco Systemsによって生み出されたフォグコンピューティングという言葉は、コンピューティング能力をネットワークのエッジにまで拡張するという意味も有している。Ciscoは2014年1月に、クラウドコンピューティングの能力をネットワークのエッジ部分にもたらす方法としてフォグコンピューティングを発表した。

 突き詰めると、フォグは標準であり、エッジはコンセプトとなる。フォグによってエッジコンピューティングというコンセプト内に反復構造を取り込めるようになるため、企業は中央集権化されたシステムやクラウドからコンピュート能力を抜き出し、より優れた性能とより高いスケーラビリティを追求できるようになる」

 OpenFog Consortiumは、ネットワークエッジに配置された、データを生成する「モノ」と、中核となるクラウドデータセンター、そしてその間にあるフォグというインフラの関係を以下のような図で説明している。

OpenFog Consortium
提供:OpenFog Consortium

市場規模の予測

 B2B分析企業MarketsandMarketsによると、2017年に推定14億7000万ドルだったエッジコンピューティング市場の規模は、2022年までに67億2000万ドルになるという。これは年平均成長率(CAGR)にすると35.4%となる。その主な原動力は、IoTと5Gネットワークの普及や、「インテリジェントな」アプリケーションの増加、クラウドインフラ上の負荷の増大となっている。

エッジコンピューティング市場のダイナミクス

原動力 ・クラウドインフラ上での負荷の増大
・さまざまな業界におけるアプリケーションの多様化
・インテリジェントなアプリケーションの増加
抑制要因 ・エッジコンピューティングにまつわるセキュリティ上やプライバシー上の懸念
機会 ・5Gネットワークの登場
課題 ・不十分な業界標準や、相互運用性の問題

データ提供:MarketsandMarkets

 MarketsandMarketsが分析した業界セグメントのなかで、2017〜2022年という予測期間で最も大きな市場シェアを握るようになるとされているのが通信業界とIT業界だ。というのも、高いネットワーク負荷と、帯域幅への高まる要求に直面した企業は、自社のアプリやサービスに効率的なモバイル(あるいはマルチアクセス)エッジコンピューティング(MES)環境をもたらさなければならないため、無線アクセスネットワーク(RAN)の最適化や拡張が必要となるためだ。

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