技術コンサルティング企業Capgeminiが新しく発表したレポートによれば、ブロックチェーンは2025年頃までに、世界的にサプライチェーンを加速する技術になるという。
Capgeminiの社内シンクタンクResearch Institutiveは、ブロックチェーンは7年以内に広く普及してビジネスとして主流になり、世界的にサプライチェーンを支える技術になる可能性があると述べている。分散元帳を実現するメカニズムであるブロックチェーンは、投資やパートナーシップを通じて、製造業や消費財産業、小売業に普及し、「新たな透明性と信頼の時代をもたらす」という。
このレポートは、消費財産業、小売業、製造業の450社を対象とした調査に基づくもので、これらの産業では、サプライチェーンの領域でブロックチェーンの導入が進んでいるとしている。導入のレベルは、概念実証、試験導入、大規模導入の3つに分類されている。またこの調査で、ブロックチェーンが広く利用されるようになるまでにはかなり時間がかかることも明らかになった。現時点では、ブロックチェーンを大規模に導入している企業は3%、試験的に導入している企業は10%にすぎない。企業の大半(87%)は、ブロックチェーンに関する初期段階の実験を行っているところだと回答している。
ブロックチェーンの大規模導入あるいは試験導入を進めている企業が多かった欧州の国は英国(22%)とフランス(17%)だが、米国(18%)はブロックチェーンの取り組みに対する投資額で先行している。ブロックチェーン技術は、生産量の追跡、フードチェーンの監視、規制に対するコンプライアンスの遵守などのサプライチェーンに関する機能に応用できる。
ブロックチェーンの普及に関しては楽観的な見方が主流だが、企業はこの技術に対する明確な投資対効果指標(ROI)の確立や、サプライチェーンに関与するパートナーとの相互運用性などの問題について懸念を抱いている。ブロックチェーン導入の「先行企業」(試験導入あるいは大規模導入を進めている企業)の大半(92%)は、導入に伴うもっとも大きな課題はROIの確立だと述べており、80%は大きな運用上の課題としてレガシーシステムとの相互運用性の問題を挙げている。また82%は、トランザクションの安全性の問題が、自社が利用しているブロックチェーンアプリケーションをパートナーに導入してもらう際の障害になっていると回答しており、ブロックチェーンは安全な技術であるという位置づけを揺るがしている。
Capgeminiの金融サービス担当最高技術責任者(CTO)Sudhir Pai氏は、「市場には、ブロックチェーンがサプライチェーンの改善に役立つことを示す非常に優れた利用事例がいくつか存在するが、ブロックチェーンは企業が抱えているサプライチェーンの課題を何でも解決できる万能ソリューションではない」と述べている。「ブロックチェーンのROIがまだ定量化されていないほか、導入に合わせてビジネスモデルや業務プロセスを再設計する必要もある。エコシステムを基盤とした、幅広いテクノロジと統合されたブロックチェーン戦略を構築し、その潜在的な可能性を現実のものにするためには、サプライチェーン全体を巻き込んだ実効性のあるパートナーシップが必要だ」
レポートでは、炭素クレジットの取引や、供給業者契約の管理、製品の偽造防止など、24種類のブロックチェーンの利用例を挙げている。Capgeminiはこれらの利用例を小売業、製造業、消費財産業に応用し、ブロックチェーン技術が契約、製品、サービスの生産、来歴、在庫の管理に利用できることを明らかにしたという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。