米IBMは10月29日、オープンソースのディストリビューションベンダーとして有数なRed Hatの買収を発表した。買収額は340億ドル(約3兆8000億円)と非常に巨額であり、IBMはRed HatをIBMのハイブリッドクラウド事業部のもとに配置する。ただしRedHat自体は、独立した組織として運営される。
この発表後、オープンソースに関わるデベロッパーやRed Hatの従業員からも、IBMに買収されることを不安視する発言などが相次ぎ、IBMでハイブリッドクラウドを担当するシニアバイスプレジデントのArvind Krishna氏は、「Red Hatの独立性は維持される。実際、買収が完了しても、Red Hatは今までと何も変わらない」と発言している。
Red Hat テクノロジ担当社長のPaul Cormier氏も、「今回の買収により、Red HatやRed Hatが関わっているオープンソースコミュニティーとの関係が変わることはない。Red HatとIBMが協力することで、IBMが培ってきたオープンソースコミュニティーへの貢献と、エンタープライズグレードのソフトウェアをRed Hatの製品にフィードバックし、エンタープライズにとって、最もパワフルなソフトウェアと製品が提供できるようになるだろう」と語っている。
買収について合意したIBM 最高経営責任者(CEO)のGinni Rometty氏(右)とRed Hat プレジデント兼CEOのJim Whitehurst氏(報道発表資料より)
Red Hatは、Linuxのディストリビューションとして有名なRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を始め、Linuxの仮想化機能であるKVMや、JavaベースのアプリケーションミドルウェアのJBoss、OSやアプリケーションなどを自動的にインストールしてシステムを構成するAnsible、クラウド構築システムのOpenStackを企業で利用できるようにディストリビューション化したOpenStack Platform、コンテナテクノロジのDockerと管理ソフトのKubernetesを企業で利用できるようにしたPaaS型のクラウド基盤ソフトウェアのOpenShiftなど、多くのオープンソースソフトウェア(OSS)を企業で安定して利用できるようにしている(もちろんRed Hat自体も各種のオープンソースコミュニティーに対してコードをフィードバックして協力している)。
IBMのオープンソースコミュニティーに対する貢献はあまり目立たないが、大きなものがある。実際、ビッグデータを扱うHadoopやSparkなどにおいても、多くのコードがコミュニティーに提供されている。またIBM自身が開発した、企業がMacのシステム管理を行うソフトウェア「Mac@IBM」をオープンソースとして公開するとも発表したばかり。IBMはAppleと提携し、MacやiOS製品を企業に浸透させることを行っている。実際、IBM社内ではWindowsからMacへの移行が行われており、その過程において必要となったソフトウェアをMac@IBMとしてまとめ上げた形だ。