松岡功の「今週の明言」

シスコが異業種企業との提携を積極的に進める理由

松岡功

2018-11-02 11:04

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、シスコシステムズの鈴木和洋 代表執行役員会長と、日立製作所の桃木典子 働き方改革ソリューション推進本部長の発言を紹介する。

「異業種企業との提携をどんどん進めていきたい」
(シスコシステムズ 鈴木和洋 代表執行役員会長)

シスコシステムズの鈴木和洋 代表執行役員会長
シスコシステムズの鈴木和洋 代表執行役員会長

 シスコシステムズが先頃、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(SIPS)と提携し、シスコのビデオ会議システムに高性能なソニー製カメラを採用した形のカメラ分離型HDビデオ会議システムを発表した。鈴木氏の冒頭の発言はその発表会見で、シスコの最近のアライアンス戦略について述べたものである。

 今回の提携では、シスコが提供しているビデオ会議システム「Cisco TelePresence」の商品構成の中の「Cisco Webex Room Kitシリーズ」に、ソニー製のPTZ(パン、チルト、ズーム)機能を備えたカメラを採用。より高画質で臨場感のあるスマートなビデオ会議環境を実現するカメラ分離型のHDビデオ会議システム「Cisco Webex Room Kit Plus PTZ」として12月から販売展開していく。国内を皮切りに、アジア市場、さらにはグローバルに展開していく計画だ。

 両社ではビデオ会議システムを、コミュニケーションを活性化し、スピーディーな情報の有効活用を行う生産性向上ツールとしてだけでなく、多様な領域における新しいコラボレーションやイノベーションを促進するものと捉え、協力していく構えだ。

 鈴木氏は今回の提携の背景について、「シスコでは今、優れたテクノロジを保持しているIT分野ではない異業種企業との戦略的な提携を強化している。最近では例えば、ファナックやヤマザキマザックといった産業機械分野を代表する企業との提携を発表し、協業を進めている。そうした中で、今回はSIPSが持つカメラを中心とした優れたイメージングテクノロジと、シスコが持つネットワーク、クラウド、セキュリティなどのテクノロジを組み合わせることで、何か新しいパートナーシップによる価値を実現できないかと考え、これまで2年半にわたって協議を行ってきた」と説明した。

 ちなみに、シスコがソニーグループと提携して協業を図ったのは、これが初めてとのこと。シスコがこうした異業種企業との提携を積極的に進めているのは、デジタルトランスフォーメーションが全産業において進展しつつある中で、シスコが保持するテクノロジを存分に活用してもらい、いわば「シスコ経済圏」を大きく広げていこうという狙いがあると見られる。

 会見終了後、鈴木氏に「異業種企業との協業がシスコの“プラットフォーム戦略”か」と聞いたところ、「いや、プラットフォームというより“コネクテッド戦略”だ」と返ってきた。ネットワークに強みを持つシスコらしい考え方だと感じた。

右から、ソニー執行役員でSIPSプロフェッショナル・プロダクツ本部副本部長の小島政昭氏、米Cisco Webex端末担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのSnorre Kjesbu(スノーレ・キャスブ)氏、シスコシステムシステムズの鈴木氏、石黒圭祐氏
右から、ソニー執行役員でSIPSプロフェッショナル・プロダクツ本部副本部長の小島政昭氏、米Cisco Webex端末担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのSnorre Kjesbu(スノーレ・キャスブ)氏、シスコシステムシステムズの鈴木氏、石黒圭祐氏

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