Tech Summit

ライバル企業との差別化には技術強度が重要--マイクロソフトのナデラCEO - 22/24

阿久津良和

2018-11-06 06:00

 日本マイクロソフトは11月5日から3日間、都内で年次イベント「Tech Summit 2018」を開催している。初日の基調講演には、米Microsoft最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏や日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏らが登壇した。

日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏
日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏

 冒頭では、平野氏が同社のソーシャルAI(人工知能)チャットボット「りんな」を利用できるスマートフォンともに登場、最新の画像認識エンジン「共感視覚モデル(Empathy Vision model)」を搭載したりんなをアピールした。従来の画像認識技術に「感情と共感」を与えることで、利用者とリアルタイムによる感情を含んだ会話を実現できると説明し、「日本市場においてもMicrosoftはAI技術による変革を推進する」と語った。

 次に登壇したNadella氏は、日常生活においてコンピューティングが浸透し、あらゆるビジネスに変革をもたらしていると述べつつ、「Tech Intensity(技術強度)」の重要性を強調した。その技術強度を生み出すには、ワールドクラスの技術を採択する「Tech Adoption(技術採択)」と「Tech Capability(技術能力)」が必要だと説明。一意的なデジタル能力を持つサービスを生み出し、他の企業との差別化を実現するには、両者を掛け合わせる必要があるという。さらに、安定した関係性に基づくパートナー選定が重要だとも語りつつ、「Tech Intensityこそ、われわれのミッションの礎となる」(Nadella氏)と、同社の方向性を示した。

Microsoft最高経営責任者のSatya Nadella氏
Microsoft最高経営責任者のSatya Nadella氏

 Nadella氏は続けて、クラウドやAIを扱う姿勢を取り上げつつ、Microsoft Azureの日本リージョンについて、「容量を向こう1年で倍増させる予定だ」と表明、パブリッククラウドプロバイダーとしての同社の存在感を高めた。他方、全てのビジネスが技術の進歩を享受するには、セキュリティやプライバシー、法令順守に配慮しなければならないとした。多くの場面でデータの扱いが見直されつつあるが、Microsoftは「皆さんの独自データはMicrosoft Graphに蓄積することで、他のサービスやソリューションでのデータ利用に許可を出せる」とし、ユーザーが自らデータ管理を行うことで、ベンダーもしくはサービスによるデータロックインの被害を防げると説明した。

 同氏は、この他に小松製作所やJTBおよびナビタイムジャパン、トヨタ自動車、JR東日本、ニトリホールディングスによる同社製品およびサービスの導入事例を披露した。特にトヨタ自動車は、現場の生産性を再認識し、工場のスタッフがMicrosoft HoloLensやDynamics 365を使用して、仮想空間への機材設置や、車体を彩色する際の厚さ測定をデジタル化しているという。

ニトリホールディングス 上席執行役員 情報システム 改革室室長の齋藤めぐみ氏
ニトリホールディングス 上席執行役員 情報システム 改革室室長の齋藤めぐみ氏

 またMicrosoft 365の最新動向に関しては、General Manager for Microsoft 365のCatherine Boeger氏が登壇し、先日Microsoftが開催したIgnite 2018でも披露した多数の機能を紹介。Microsoft Teamsを導入したニトリホールディングスの担当者も登壇した。同社では、さまざまな業務の現場にある情報の活用を推進すべく、「各部署に同サービスの機能活用を現場へ啓蒙する“アンバサダー”を配置して、社内で情報共有するワークショップを月に1回で開催した。その結果、Microsoft Teamsを通じてデータを自由に扱えるようになった」(ニトリホールディングス 上席執行役員 情報システム 改革室室長の齋藤めぐみ氏)といい、課題であったデータのサイロ化状態を解消したと説明する。

 AIについてはワールドワイド最高技術責任者(CTO)のNorm Judah氏が説明。デジタルトランスフォーメーションの定義を、「『コンテンツのデジタル化』『プロセスのデジタル化』を通じて従来とは異なる新しいものを実現すること」とし、日本マイクロソフトらが先日発表したあいおいニッセイ同和損保の事例を挙げた。その上で企業におけるAIの利用において、人の創造性を高める責任あるAIが求められるとし、その実現に「AIサービス」「アジャイルAI」「AI成熟度」「AIの倫理」が重要だと語る。例えば、米スーパーマーケットチェーンの「Kroger」では、商品棚の前に立つ人物に応じて店舗内のディスプレイを変更し、キャンペーンを展開する仕組みをMicrosoft AIで実現したという。同社は「『アジャイルAI』の実現には仮説を立てるビジネスドライバが必要だ。われわれにはコードを書かなくてもMicrosoft AIを利用できるソリューションがある」とJudah氏は述べた。

 基調講演の後半では、日本マイクロソフト 執行役員 常務 デジタルトランスフォーメーション事業本部長の伊藤かつら氏が、同社のデジタルソリューションにおいて重要と位置付けているという「セキュリティ」「デリバリー」「イノベート」に言及し、それぞれの領域についてMicrosoft幹部が紹介した。

 セキュリティではCVP for SecurityのRob Lefferts氏が説明に立ち、Microsoftが多くのサイバー攻撃を受けると同時に、各種脅威に関して蓄積したデータを活用するセキュリティソリューションを持つとアピールする。企業のセキュリティ課題を可視化するMicrosoft Secure Scoreについても、「スコアを満たした企業は30倍以上の安全性を実現できる」と述べ、また、パスワード入力を不要にするスマートフォンアプリ「Microsoft Authenticator」も披露した。

 イノベートに関しては、マイクロソフトテクノロジーセンター/サイバークライムセンター長の澤円氏がIgnite 2018で発表された「Windows Virtual Desktop」を、業務執行役員 コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部長のDrew Robbins氏が「Azure Data Explorer」をそれぞれデモンストレーションして見せた。Azure Data Explorerは、20ペタバイトにもおよぶログ分析に同社内部で使っていたものをサービスとして提供するものとなる。

伊藤かつら氏が触れた「デリバリー」の例として、Azure IoT認定デバイスが既に1000種類以上になっているという

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