Cloudera 代表取締役の中村共喜氏
Clouderaは11月6日、都内で開催したプライベートイベント「Cloudera World Tokyo 2018」に併せて事業戦略説明を行い、10月に米国で発表したHortonworksとの合併や、同25日に国内で発表されたNECとの戦略的協業の強化について言及した。
まず登壇した代表取締役の中村共喜氏は、この日が代表就任から1年と1日目に当たるとしてこの1年の歩みを振り返り、「テクノロジを訴えるのではなく、顧客企業のビジネス上のチャレンジに対してわれわれのテクノロジである、分析と機械学習のためのクラウドに最適化されたデータプラットフォームを利用してもらうことで、いかにチャレンジを解決していくか、ということを考えるビジネスに大きく方針を転換した」と語った。
その具体的な成果として、国内でも金融や流通などの大企業顧客における採用が拡大している。しかし、まだ事業所帯の小さな日本法人がこうした顧客企業の求めるレベルのサービスを自社だけで提供することは不可能という認識から、パートナーシップを重視して強化に努めているとした。
NEC AIプラットフォーム事業部長代理の森山由紀氏
この流れでNECがClouderaの「ストラテジックパートナー」に認定された。NECのAI(人工知能)プラットフォーム事業部長代理の森山由紀氏は、提携の背景について、「データ基盤というと、従来はリレーショナルデータベースなどによる基幹システムのデータベースが中心で、やや大規模化した際にはデータウェアハウス(DWH)だったが、昨今は顧客企業のデジタル変革を支援するために非構造化データを適切に管理していく必要性が非常に高まってきている。NECはこれからのシステム基盤に向けてHadoopの領域に着目しており、今回の(Clouderaとの)提携に至った」と説明した。
今回の戦略的協業によって両社の関係は、従来の「仕入れ/再販」というものから技術協力まで踏み込むことになるという。Clouderaでは現在、AIについての取り組みを強化していることから、「AIエンジンの活用には、データをたくさん貯めてマネージメントしていく仕組みが重要だが、Clouderaをデータプールとしてマネージメントするところが整備できた」(中村氏)と位置付け、今後は、「NECは『NEC the WISE』というブランドでAIエンジンにフォーカスしているが、この部分での連携をますます深め、お客さまのシステムの中で『AIエンジンがいつのまにか動いている』『何だか心地よい』といった環境を提供できるよう期待している」(森山氏)とした。
米Cloudera CTOのAmr Awadallah氏
また、同社の製品戦略について米Cloudera 最高技術責任者(CTO)のAmr Awadallah氏が説明した。創業メンバーでもある同氏は、創業からの10年を振り返って「最初の5年はビッグデータ基盤やDWHに取り組み、次の5年でAIにフォーカスした」と述べ、顧客企業がAIに取り組む際に重要なこととして、「土台が出来ていないと失敗するので、いきなりAIに行ってはいけない。まずは土台をしっかり作ることだ」と指摘。ビッグデータ基盤や分析、データサイエンスといった取り組みから機械学習/AIの活用に進むべきだとした。
併せて同氏は、提供を開始したばかりの新製品「Cloudera Workload XM」も発表。同製品を「インテリジェントなワークロード体験管理クラウドサービス」と説明し、「『X』はExperience(体験)、『M』はManagemnet(管理)の意味」だという。
米Cloudera CMOのMick Hollison氏
Hortonworksとの合併に関しては最高マーケティング責任者(CMO)のMick Hollison氏が説明し、「強力な競合だったHortonworksと合併することで、エッジからAIまでをカバーできるカテゴリーリーダーが生まれる」とした。AIに注力してきたClouderaと、IoT/エッジ分野に強みを持つHortonworksによる“理想的な補完関係”と強調する。現在は、まだ合併に関する作業が進行中で体制面など未確定要素も多い状況だが、2019年第1四半期に合併の完了が予定されている。その後、新規ユーザー向けに両社製品を統合した「Unity 1.0」の提供を開始し、2020年後半~2021年には機能的な統合も完了した「Unity 2.0」をリリースする予定だという。
ClouderaとHortonworksの合併により、広範かつ網羅的な事業領域が実現されるとしている
なお、Unityは「統合」という意味で使われている一種のコード名であり、製品名ではないとのこと。Awadallah氏は両社の製品について、「技術的には約70%が共通であり、両社がそれぞれ差別化のために注力した部分が違っているという状況だ」とし、両社の製品統合が技術的にはさほど困難ではないとの認識を示した。また、合併後の社名はClouderaのままにで、「何も変わらない」(Hollison氏)という。
合併完了後は新規ユーザー向けに製品統合版の提供が始まる。既存ユーザー向けには従来製品のサポートを継続し、十分な余裕を持って移行できるようなスケジュールを想定しているという