ところで、なぜマイクロソフトがMaaSに取り組んでいるのだろうか。清水氏は、「各国の社会改革に貢献していこう、というのがマイクロソフトが目指す企業像」だからだと説明する。
日本マイクロソフトでは2020年に向けて、「ライフスタイル」「インダストリ」「ワークスタイル」の3つのイノベーションを推進しているという。このうち、ライフスタイルとワークスタイルを結ぶのがインダストリのうちのトランスポーテーション、すなわち移動分野だ。
さらにマイクロソフトでは、移動分野の中にもさまざまなMaaSの形態が出てくると予想している。通院、買い物など日常生活におけるMaaS、足の不自由な人が自由に移動できるアクセシビリティなMaaS、ヘルシンキのように環境に配慮したMaaSなど。特にマイクロソフトでは、働き方改革に資するMaaSに注目しているという。
マイクロソフトが取り組む3分野と、それらに関わるMaaSの形態
これまでも働き方改革を推進してきたマイクロソフト。これをさらに加速するためには、移動を便利にしていかなければならないと考えているという。「この最初の一歩として、働き方に資するMaaSに注力していく」(清水氏)。
働き方に資するMaaSとは何だろうか。清水氏は、「日本では基本的に事務所に出社し、用件があれば外出し、また事務所へ帰社する」といった例を挙げ、「移動時間が長く取られている」と説明。「MaaSによって空いた時間にテレワークで仕事をするなど、移動時間を最適化し削減できれば、効率的に仕事ができ生産性が向上する」と語った。
働き方改革に資するMaaS
「テレワークなどの働き方の変革は、今後ますます進んでいくのでは」(清水氏)と予想する。2020年の開催が予定される東京オリンピック・パラリンピックでは、通勤・通学客に加え大会観戦者が交通手段を利用するため、鉄道路線の利用者数が最大で3倍となる予想もあるという。さらに清水氏は、「この混雑緩和を実現するためには、MaaSがますます重要になる」と説明した。
マイクロソフトは、Office365とMaaSを連携し、Officeの予定表から移動の提案やコワーキングスペースの予約などが可能になる未来を構想しているという。「ただシームレスな交通利便性の追求だけでなく、仕事と移動を連携させたMaaSが生まれれば、日本の社会が変わるのではないか」と期待を語った。
「ニュースなどがMaaSで注目するのはレベル0の分野が多く、まだまだレベル2や3の段階の話はまだまだ少ない」と語った清水氏。「今後レベル2や3のビジネスが日本に展開されると、それに対してさまざまな技術が必要になる」と述べ、「技術者の立場から支えてほしい」と締めくくった。