コンサルティング現場のカラクリ

ITの基本戦略を設定(1):IT部門が苦悩から脱するには行動を起こすしかない

宮本認(ビズオース ) 2018年11月10日 07時00分

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(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」からの転載です)

 25年以上にわたり、日本のIT部門は苦しい状態に陥ってきた。このまま放っておけば、その状態は今後も続くだろう。あらゆる業界でビジネスのデジタル化が叫ばれ、企業経営におけるITの重要性が未曽有の高まりを見せる時代に…である。

 これは企業にとって大きな機会損失である。顧客の離反、売り上げの減少、競合との価格差やサービス格差などが起こるだろう。今は、そうした切迫感さえ感じさせる時代になりつつある。何とかしなければならないのは言うまでもない。

 問題はどこからどのように手を付けていくかにある。25年以上の長きにわたり染み付いてきた体質は、そうそう変わるものではない。そうした状況の中に、優秀な人材がいると期待するのは難しい。攻めの体制を整えようとするだけでも相応の努力を要し、整うころには改革を推進する経営者の任期も終わりに近づいているということもあるだろう。

 「改革は2年が限界」という経営者の言葉もある。さまざまな企業の改革をお手伝いする中で、こうしたことを改めて実感する。毎年、何かしらの「改革」をやっている企業があるが、社員の疲労と諦観ぶりはすさまじく、見ていて痛々しい。改革をやるならば一気にやってしまいたいものだ。

 しかし、現実問題として、ITの改革には時間がかかる。情報システムはモノであり、償却期間や構築期間を考えなければならない。大企業であればあるほど、その期間は長くなる。これが大きな制約となる。IT部門を変えるというのは、その制約を踏まえて考えなければならない。

 では、何から着手すべきか。まずは最高情報責任者(CIO)や情報システム部長の入れ替えから始めるべきだろう。これはセオリーである。今いる人では、うまくいっていない状況を打開することはできない。当たり前のことだ。この傾向は欧米企業で一層鮮明だ。最高経営責任者(CEO)がIT環境を変えたいと思ったとき、まずはCIOを連れてくる。グローバルスタンダードが徹底されている欧米企業では、同じ業界内であれば、本当にほぼ同様のIT戦略を採る。だから、ライバル企業のCIOを連れてきて、同じことをやらせるのだ。

 筆者はかつて、製薬業、消費財、化学、投資銀行などでこうした調査したことがあるが、業界トップ企業のCIOが、同じく第3位や第5位の企業を渡り歩いていく様が顕著だった。その結果、スタンダードが業界に広がっていく。

 しかし、日本企業で同じことはできない。中小企業ならまだしも、経営者がITを変えたいと思ってCIOを連れてくることはほぼない。例えば、日本トップの銀行のCIOが、第2位や第3位の銀行へ転籍するかと言えば、絶対にありえない。だから、業界のスタンダードはそもそもできないし、仮にできたとしても広がることはない。

 逆説的な言い方をすれば、欧米は業界のトップ企業のみが、今後のITはどうあるべきかを真剣に考えていると言ってもいいかもしれない。何を考えているかと言えば、競合他社がまだやっていない新しいことを考えている。モバイルやクラウド、最近では人工知能(AI)だろうか。

 要するに、トップ企業が業界のITを切り開くのだ。そして、それ以外の企業は、そのまねをする。その辺りはシンプルに考えているのだろう。2番手以下の企業は、特にITに凝らなくてもいいし、極論すると今後のITがどうあるべきかなど考えなくてもいい。2番手戦略は、決して悪い戦略ではない。同じ人が2度、3度と繰り返せば、1度目よりも上手にこなすだろう。コストもそれなりに抑えられるだろう。ソリューションにだって実績がある。それだけで十分である。

 こうしたスタンダードが広がる仕掛けは、産業全体で見ると大きな効能をもたらす。トップ企業は、常にイノベーションを考える。成功するものもあれば、失敗するものもあるだろう。そして、成功したものが業界全体に広がり、真のスタンダードとなる。そうした、サイクルができている。ベンダー側も多大な投資をする。いったんスタンダードとなれば、2番手、3番手の企業への導入で投資を回収することができる。、海外がITで先行し、10年以上の差を付けているのは、こうした業界全体の仕組みに依存していることも大きな要因の一つだ。

 CIOの転籍がありえない日本の企業は、産業全体レベルでの標準化を期待することはできない。すなわち、自分自身でITに真剣に向き合わなければならない。しかも、会社の成り立ち、強い部門、自社のリソース状況が大きく競合他社と異なり、極めて経営の独自性・独立性が高い日本では、ITもそれと向き合って運営をしなければならない。当たり前だが、日本企業のCIOやIT部長は、「自分」で社内のITやIT部門のことを解決しなければならない。

宮本認(みやもと・みとむ)
ビズオース マネージング ディレクター
大手外資系コンサルティングファーム、大手SIer、大手外資系リサーチファームを経て現職。17業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。金融業、流通業、サービス業を中心に、IT戦略の立案、デジタル戦略の立案、情報システム部門改革、デジタル事業の立ち上げ支援を行う。

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