今さら聞けないネットワーク回線の基礎

第9回:将来のネットワーク--最近トレンドのSD-WANって何?

飯田哲也 (アルテリア・ネットワークス) 2018年12月12日 07時00分

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 最近のトレンドの一つとして、「SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)」というネットワークサービスがある。細かいことは言及しないが、これまで紹介してきたネットワークサービスと比べて何が違うのかというと、このサービスは「オーバーレイネットワークサービス」だということだ。オーバーレイネットワークサービスとはなんだろう?

 オーバーレイとは重ねるという意味である。つまり、重ねるサービスだ。何に重ねるのかというとこれまで紹介してきた、インターネット接続サービスや閉域網サービス、専用線サービスに“重ねる”のである。なぜ重ねるのか?

図版1

通信の最適化事例

 これまでにもちらほら“要件に合ったものを選べばいい”などと書いてきたが、顧客企業はネットワークサービスを利用目的に応じて採用してきた。採用したネットワークサービスは、回線を引くという物理的な作業が伴うことからそう簡単には変更したくないところだが、世の中はそんな事情はお構いなしに目まぐるしく変化していく。

 例を挙げよう。最近は業務用クラウドサービスが全盛だ。これまで社内で完結していた業務用サービスはインターネットの先のクラウドに置かれるようになった。まさか社内の情報を社外で管理するようになるとは想像もしなかったことだろう。そうすると何が起こるのか?

 インターネットはサイバーリスクの塊である。仕事中はなるべく接続させたくない。接続するなら管理したい…ということで、大体の会社のネットワークにおいてインターネット接続は1カ所で集中管理するというのがトレンドだった。これは社内ネットワーク内でほとんどの通信が完了し、社外に出る通信が少ないからこそ成り立っていた構成だ。これが、思いもよらずクラウドサービスなどというものが流行りだし、そことの通信が大部分を占めるようになる。そうなればその通信を管理する一箇所がボトルネックになるのは自明の理だ。

図版2

 そこで管理者は考えた。クラウドサービスとの通信だけ、各拠点から外出できないだろうか。しかし、そのためにはトレードオフで各拠点のルータをそういうことができるように設定して回らないとならない。面倒臭い。

 さて、前述したSD-WANサービスは基本それを一括管理できる機能を持つ。クラウドサービスへの通信だけインターネットに、それ以外を今まで通り社内ネットワークへと一括で設定することが可能だ(これを「インターネットブレークアウト」という)。

図版3

 オーバーレイサービスを選択する意味はここにある。アンダーレイのサービスはそのままに、その上に流れる通信の最適化を実現するのだ。

通信は多様化している

 SD-WANでできることはそれだけではないが、SD-WANを語るときに最も多く挙げられる事例を書かせてもらった。さて、ここで深読みしてみよう。これはつまりどういうことなのだろうか。

 そう、つまりネットワークの使い方が多様化してきたのだ。今や何でもかんでもネットワークでデータを送る時代になっている。テレビに代表される映像メディアはこれまでテレビの電波による配信が主だったが、最近はネットワークからのストリーミングの方が高画質の映像を見られたりする。電話も2025年に終了する電話専用の通信網(公衆交換電話網:PSTN=Public Switched Telephone Network)からIP通信に切り替わる。

 同じところをいろいろなデータが通るのだから、優先順位を決めたり、経路や帯域を切り分けたりしてサービスごとの品質確保を図る必要が出てくる。通信業界はこれらを可能とするサービスを今後提供していかなければならないのだ。SD-WANはそれを実現可能とする新しいサービスといえる。

基本機能のさらなる進化

 さらに、通信の多様化とともに進化するのがその基本機能だ。

  • たくさんのデータが送れるようになる(超大容量)
  • 早く正確に送れるようになる(超低遅延)
  • 多くの機器から同時に送れるようになる(多数同時接続)

 これらは次世代の移動通信システムである「5G」で高らかにうたわれていることだが、有線も含めたネットワーク全般の発展にも同様にいえることである。

 5Gはあと少し先だが、多数同時接続などはLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるサービスが出始めた。多数の機器を扱うためにその消費電力(=コスト)を極限まで抑えつつ、それでも遠くまで通信を飛ばせる技術を活用したサービスだ。

 5Gほどではないにせよ、今ではスマートフォンで高画質の動画を見ることも可能になっている。ネットワークはこれからも進化を続けていくだろう。

次回、いよいよラスト

 これまで、ネットワークのはじまりから、将来のネットワークまで筆者の視点ではあるが簡単に説明してきた。次回はどこから手を付ければいいのかを解説し、最後にしようと思う。

飯田哲也(いいだてつや)
アルテリア・ネットワークス エキスパート・エンジニア
1973年生まれ。PlayStatoinシリーズの開発に関わりハードウェアおよびソフトウェアの基礎技術を会得。PlayStation2の開発においてはPS1互換エミュレータのメインプログラマーを務める。その後、台湾楽天市場のプロデューサー兼プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)としてウェブサイトの構築と運用を担当。アドテクノロジのベンチャーを経て、楽天でんわおよび楽天モバイルの立ち上げに技術担当として携わる。

2016年からアルテリア・ネットワークス。レジスタからクラウドまでソフトウェアの多くのレイヤに関わった経験と、ゲーム・電子商取引(EC)・アドテクノロジ・電話・インターネット接続事業者(ISP)と多くの業界を渡り歩いた経験をもとに技術やプロダクトのリサーチ・マーケティング業務を担当。現在に至る。

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