レッドハットは11月8日、都内でプライベートイベント「Red Hat Forum Tokyo 2018」を開催、米Red Hat 社長兼最高経営責任者(CEO)のJim Whitehurst氏が記者会見を行った。10月28日に発表されたIBMによるRed Hatの買収について言及した。
Red Hat 社長兼CEOのJim Whitehurst氏
Whiethurst氏は、まず「IBMとの統合によってRed Hatのオープン・ハイブリッド・クラウドのビジネスが加速される」「われわれはオープンソースのヘリテージ(遺産/伝統)を守り、今後もオープンソースのリーダーであり続ける」「Red Hatは独立性を維持したIBMのビジネスユニットとなる」とした上で、同社のビジネス状況に関するプレゼンテーションを行った。
同社の収益は一貫して右肩上がりの成長を継続しているが、この理由について同氏は、「経済状況が思わしくない時期もあったが、オープンソースは低コストなので、不況下でもユーザー企業が導入できなくなったりはせず、そのため収益も悪影響を受けなかった」という。また、今後に関してはユーザー企業の多くが、今後“破壊的な変化”に直面することになるとし、その際に必要となるイノベーションがオープンソースのカルチャーと親和性が高いという。そこで同社は、今後ともオープンソースを通じてユーザー企業の変革を支援していくとした。
プレゼンテーション後の質疑応答は、IBMとの統合に関する話題に集中した。同氏の発言内容で、IBMとの関係については「IBMはRed Hatの製品を売るが、Red HatはIBMの製品を売ることはない」との表現で中立性を強調している。
また、なぜ今IBMとの統合に踏み切ったのかという点に関しては、今後ユーザー企業が直面すると同社が想定しているオープン・ハイブリッド・クラウドへのシフトが数年に一度の大きな変革であり、このタイミングをつかめないと、次の波が来るのは何年も先になるという認識だとした。加えて、現在の同社の事業規模では市場のニーズ全てに対応することは不可能だとした。一方でIBMは、グローバルで手厚いセールスやサポートの体制を構築しており、この組織力を生かすことで、Red Hatとしてもユーザー企業に対してタイムリーな支援を提供する体制ができるとする。両社が繰り返し語る「ビジネスを加速」の意味は、Red Hat単独では市場のニーズを取りこぼすことになるという認識に基づくものといえる。
中立性に関しては、Dell EMC傘下でも従来通りさまざまなベンダーに製品/テクノロジの提供を継続しているVMwareの例があり、Red Hatもその取り組みは可能だろう。しかし、VMwareが独立企業の形を維持しているのに対し、IBMのクラウド事業部の下に入ると言われるRed Hatが同様の中立性を今後も維持できるのかは不透明だ。
現状ではまだ当局による承認が下りていない段階であり、買収完了後の状況を心配するのはまだ早いが、どのような展開を見せることになるにせよ、この合併がIT業界全体にインパクトを及ぼす歴史的な転換点と位置づけられることは間違いないだろう。