2018年における法人向け分野の大きなITトレンドとして、企業向けの拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を活用した従業員向けの訓練プログラムが挙げられる。例えば、WalmartやTyson Foodsといった巨大企業は、最新のMR技術を用いて既存の訓練パラダイムに新風を吹き込むという野心的なパイロットプログラムを実施しており、ニュースの見出しを飾ってもいる。
ABI Researchによると、企業におけるVRを用いた訓練は2022年までに60億ドル以上の市場を生み出し、2019年には企業を採用に踏み切らせるような重要なユースケースが登場しそうだという。
WalmartとTysonはその先駆けと言える。シミュレーションは、食肉加工場の現場作業員に対する安全管理やコンプライアンスから、販売部門の従業員に対する共感や感情理解を活用した接客方法に至るまで、あらゆる従業員を訓練するために用いられている。
VRヘッドセットのようなオフザシェルフ型テクノロジの急速な進歩と、AR/VRアプリケーションの開発に向けた堅牢なエコシステムの登場のほか、StrarVRが開発した製品のような企業向けの機能を組み込んだ新たな法人向けAR/VRシステムによって、VRによる訓練の導入を模索している中規模企業のハードルは低くなってきている。
これらの長所が、訓練における全般的なコストの削減と安全性の向上に付加される。なお、安全性は石油関係やガス関係のような危険な業界にとって特に重要な要素だ。
防衛関係のシミュレーションを手がけるBohemia Interactive Simulationsのビジネス開発部門でバイスプレジデントを務めるJohn Burwell氏は筆者宛ての電子メールに「2019年には、台頭するAR/VR/MR技術をあらゆる種類の訓練で活用する試みが、シミュレーション業界内で広範な予備プロジェクトとして推進されていくだろう」と記すとともに、「その狙いは大幅なコスト削減と、訓練対象者に対する訴求力を持つより厳格なソリューション、必要に応じて訓練を実施できるポータビリティだ」と記していた。
Burwell氏の企業が取引をしている防衛業界は、昔から大規模シミュレーションシステムのユーザーとなっている。しかし、そういった業界でもVRヘッドセットのような、より新しく、より低価格な技術を採用するようになってきている。
Burwell氏は「シミュレーションによる訓練におけるAR/VR/MR技術の採用に向けた障壁は消えるだろう」と述べるとともに、「これによりAR/VR/MRベースの訓練システムの広範な開発と配備につながるだろう」と来年の展望を述べた。
企業におけるAR/VRでの訓練が最も成長する分野には、エネルギー業界や産業界の技術者訓練が含まれている。
フィールドサービスも、従業員の訓練目的でAR/VRの導入に目を向けるようになるだろう。また、運輸業界も仮想訓練の理想的な候補となり、採用が増えていくだろう。
その例として、UPSではトラック運転手に対する仮想シミュレーションでの訓練を既に実施している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。