ソフトウェアで変わり始めたネットワークの利用形態--Coltの水谷氏

國谷武史 (編集部) 2018年11月27日 06時00分

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 近年の通信業界は、SDN(Software Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)などのソフトウェア技術をネットワークの制御や運用に取り入れる動きが進んできた。その結果として現在は、ネットワークサービスを実際に利用するユーザー側にも変化が生じ始めているという。

英Colt Technology Services Head of Global Business Partner Marketingディレクターの水谷安孝氏。日本法人のプロダクトマーケティングマネージャーなどを経て、現在は英国本社でグローバル事業を担当する
英Colt Technology Services Head of Global Business Partner Marketingディレクターの水谷安孝氏。日本法人のプロダクトマーケティングマネージャーなどを経て、現在は英国本社でグローバル事業を担当する

 欧米やアジアで850以上のデータセンターや都市部を中心に通信事業を展開する英Colt Technology Servicesでビジネスパートナーマーケティング部門の統括責任者を務める水谷安孝氏は、「この1年でオンプレミスにあるデータをデータセンターへ必要な時にだけアップロードしたいという法人需要が目立つようになった。背景には、ITシステムのクラウド化やAI(人工知能)活用などに伴うビッグデータの転送が課題にある」と話す。

 同社は、SDNやNFVなどを利用して主要都市やデータセンター、クラウド間を100Gbpsの広帯域ネットワークで接続する「Colt IQ Network」のサービス拡大を進める。2017年10月には、国内でユーザーが必要な時間や期間に応じて広帯域接続を利用できるオンデマンド型サービスも開始した。オンデマンド型のネットワーク利用は、ソフトウェア技術で柔軟なネットワークの構成や制御などが可能になったことにより実現されたものだ。

 従来のネットワークサービスは、ユーザーがあらかじめ想定する利用形態をもとに、必要な回線や帯域、機能、設備を用意しなければならず、そのためのコストや期間も大がかりで固定的だった。ソフトウェア技術がネットワークにもたらした変革は、サービスの多様化と柔軟性の提供であり、これからの通信事業は「クラウドのようなオンデマンド型にシフトしていく」(水谷氏)という認識である。

 オンデマンド型サービスのユーザー事例では、9月に映像制作大手IMAGICA Lab.での導入を発表している。映像コンテンツは、4Kや8Kといった超高精細化が進んでおり、データサイズも非常に巨大だ。IMAGICA Labでは週に数十テラバイト規模の映像ファイルを扱っており、データセンターへの閉域網経由での転送においてオンデマンドでコストを節約しながらネットワークを利用できる点が評価されたという。また、ドイツで開かれるベルリン国際映画祭でも、同社が上映会場への作品データのネットワーク配信を担当。特定期間に複数拠点でネットワークを利用するといったシーンにもオンデマンド型が適している実例になった。

 水谷氏によれば、企業ユーザーのオンデマンド型サービス利用は、上述のクラウド化やAIなどの新たなテクノロジ利用が中心になると見られる。「一時的にでもクラウドのデータセンターへ膨大なデータを転送しなければならず、従来の固定的なサービスでは対応しづらい面があった。例えば、定期的なバッチ処理といったシーンでもオンデマンド型サービスなら使いやすいだろう」

 オンデマンド型サービスはソフトウェア技術が可能にするネットワーク利用の一つのケースだが、今後はIoT(モノのインターネット)など、用途や目的に応じた新しいサービスやアプリケーションの出現が期待される。新規分野に進出する通信事業者も多いが、「われわれは基本的にネットワークに注力する立場であり、その代わりにさまざまな業界・業種のパートナーと連携して、多様なユーザーニーズに応えるソリューションを提供していく」と語る。

 また直近では、世界の主要な通信事業者が参加する「ITW グローバルリーダーズ フォーラム」で、香港のPCCWやHKT、英BTと共同によるブロックチェーン技術を用いた通信事業者間決済の実証に成功した。「企業が地域をまたいでネットワークを利用するようなケースでは、事業者ごとに支払う通信費用を一本化したり、将来的には仮想的な1つのネットワークと利用したりするようなことが可能になる」

 水谷氏は、1年ほど前に日本法人のColtテクノロジサービスから英国本社の統括責任者に就任した。「例えば働き方を見ても、英国など欧州は業務時間に仕事を集中させ、プライベートな時間に仕事をしないことが権利としても認められている。日本はあらゆる面で品質が高いと改めて感じるが、欧州に比べて夕方や夜遅くまでオフィスに残る人がとても多い。どちらが良い、悪いではないが、通信にもグローバルとローカルの特殊性の両面があり、マーケットに受け入れてもらえる最適なサービスのあり方を探っていきたい」と話す。

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