Amazonはニューヨーク市とバージニア州北部に第2本社を設けると決定した。これで長きにわたって続いた同社の第2本社誘致競争が終わったことになる。
同社は、新本社の建設地に、ニューヨーク市クイーンズ地区のロングアイランドシティと、バージニア州アーリントン郡のナショナルランディングを選んだと発表した。このニュースは、まずThe Wall Street Journalで報じられた。Amazonは以前から第2本社に50億ドルを投資し、5万人の雇用を創出すると述べていたが、これを2つの拠点に分割するという。さらに同社は、フルフィルメント(受注から決済までのバックヤード業務全般)、発送、サプライチェーンなどのオペレーション事業用の「センターオブエクセレンス」(COE)としてテネシー州ナッシュビルを選択した。
ナッシュビルはFedEx本社があるテネシー州メンフィスから212マイル(約341km)の場所にあり、フルフィルメントや配送業務に関する人材が豊富だ。
では、Amazonが第2本社を2カ所に分割することによって得られる利点を挙げてみよう。
税制優遇措置の二重取り。第2本社を2つの都市に分割することで、トータルの事業費を下げることができる。ニューヨーク市とバージニア州が、どちらもAmazonに税制優遇措置を与えることになる。また今回、公開選定プロセスを実施することによって、Amazonは実質的にほかの地域に対する事前調査も行ったことになるが、これは将来、税制優遇措置を得るためのテンプレート的な手順になるだろう。Amazonはロングアイランドシティに2万5000人の雇用を生み出すことに対して、15億2500万ドル(約1700億円)の税制優遇措置を受ける。またバージニア州も、2万5000人の雇用創出に対して5億7300万ドル(約650億円)の優遇措置を与える。テネシー州ナッシュビルも5000人の雇用創出に対して1億200万ドル(約115億円)の優遇税制措置を提供する。
どの拠点もAmazonの成長分野に貢献する。ロングアイランドシティはマンハッタンに近く、付近には多くの広告技術会社があり、広告・メディア企業にもアクセスしやすい。広告は、同社の「その他」の売上項目における大きな成長分野だ。一方、ワシントンD.C.に近いバージニア州北部に拠点を設ければ、クラウドに移行しようとしている多くの政府機関の一層近くにAmazon Web Services(AWS)を有するAmazonの拠点を構えることができる。もちろん、最高経営責任者(CEO)であるJeff Bezos氏がWashington Postのオーナーだという事情も関係しているかもしれない。ナッシュビルは配送や業務運営の拠点になる。Amazonによれば、雇用は2019年に開始されるという。