DDoS防御機能を含む企業向けエッジ防御を製品化--アーバーネットワークス

渡邉利和

2018-11-21 09:41

 アーバーネットワークスは11月20日、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃および標的型攻撃に対する防御機能を統合した企業向けネットワークセキュリティ製品「NETSCOUT Arbor Edge Defense(AED)」を発表した。同日から出荷を開始し、最小構成での税別参考価格は、ハードウェアアプライアンス版が350万円から、仮想アプライアンス版が150万円からとなる。

 AEDは、最近注目され始めている「Threat Intelligence Getaway(TIG)」の機能に、同社の定評あるDDoS防御機能や標的型攻撃に対する防御機能などを組み合わせ、エンタープライズユーザーが必要とする境界防御機能をまとめて提供するアプライアンス製品だ。

 TIGのコンセプトは、サイバー攻撃やマルウェアなどが高度化し、従来の防御策では対応が難しくなってきているという状況を踏まえ、セキュリティベンダーなどが収集した脅威に関する最新の知見(インテリジェンス/レピュテーション)をデータ化し、この情報に基づいてパケットの通過の可否を判断するという。既存のファイアウォールや侵入検知/防御システム(IDS/IPS)の負荷軽減の役割も含むことから、こうした機器の外側、まさに外部ネットワークとの境界点(ゲートウェイ)に設置するものとされる。

 一方、この位置はDDoS攻撃に対する防御点としても有効だ。DDoS攻撃は、基本的には大量のトラフィックを送りつけることで受信側の処理能力を超過させ、機能停止を引き起こす攻撃であり、ファイアウォールなどが処理しきれないほどの不正通信が届いてしまった時点で攻撃成功となってしまう。

「NETSCOUT Arbor Edge Defense」の動作イメージ
「NETSCOUT Arbor Edge Defense」の動作イメージ

 AEDでは、ステートレス技術を採用した独自のエンジンを採用し、いったんパケットを受信してチェックするファイアウォールなどに比べると処理負荷が格段に軽く、大量のトラフィックを処理できる。ファイアウォールの前段でAEDが不正なトラフィックを遮断することにより、ファイアウォールなど既存のセキュリティ機器の処理能力をDDoS攻撃などに消費することがなくなる。

 またAEDでは、入ってくるパケットのチェックに加えて、内部から外部に発信される情報のチェック機能も強化しており、既知の攻撃者のコマンド&コントロール(C&C)サーバへの通信などを遮断することができることから、仮にLAN内部へ標的型攻撃などのマルウェアが侵入してしまった場合でも、実際に情報流出などが生じる前に被害を食い止めることが可能だという。

アーバーネットワークス カントリーマネージャーの河田英典氏
アーバーネットワークス カントリーマネージャーの河田英典氏

 カントリーマネージャーの河田英典氏は、同社がDDoS対策のトップメーカーであることに加え、全世界のインターネットトラフィックの約3割をカバーする脅威レベル解析システム「Active Threat Level Analysis System(ATLAS)」で得られた知見がAEDに組み込まれ、活用されるとした。その上で、「DDoS対策製品としてこれまで提供してきた『Arbor APS』の全機能をAEDに組み込み、さらに出て行くパケットのチェックも行う」と説明した。

 製品技術の詳細でSE マネージャー&セキュリティエバンジェリストの佐々木崇氏は、AEDに組み込まれるインテリジェンス情報について、現時点で300万レコード以上の脅威情報(AIF:ATLAS Intelligence Feeds)がパフォーマンス劣化なしに使用でき、さらに業界標準プロトコル「STIX/TAXII」をサポートしているため、他社が提供する脅威情報を組み込むこともできるようになっていると説明する。

 なお、Arbor Networksは米NETSCOUTの子会社となっていたが、このほど完全にNETSCOUTに統合され、現在はNETSCOUTのセキュリティ事業部という位置付けに変わったという。日本法人の名称は従来のままだが、製品ブランド名が「Arbor」から「NETSCOUT Arbor」に変更された。

 ハードウェアアプライアンス製品は、対応するネットワーク帯域によって複数のモデルが用意される。最小構成のモデル(参考価格350万円から)は100Mbpsに対応するが、河田氏によれば販売の中核は1Gbpsに対応するモデル(参考価格700~1000万円程度)を想定しているという。

国内での販売戦略
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