海外コメンタリー

2019年、オートメーションはビジネス戦略や業務の中心に

Forrester Research 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-11-30 06:45

 オートメーションは、デジタル変革の次のフェーズで中心的な役割を果たし、素早い製品化、高品質と高信頼性、より進んだパーソナライゼーション、便利さの拡大などの、新たなレベルの価値を顧客にもたらすという。

 Forrester Researchは2017年に、オートメーションは今後転換点を迎えて、労働力に変化をもたらし、従業員の手助けとなり、新たな顧客価値を実現すると予想した。その後、RPA企業の企業価値は急上昇し、例えばUiPathの企業価値は、2018年9月の時点で30億ドル(約3400億円)に到達した。ロボット市場のリーダー企業であるABBは、同社の生産プロセスにほかのロボットを組み立てるロボットを導入する計画だと発表している。またマサチューセッツ工科大学(MIT)は、人工知能(AI)を中心に据えた新カレッジ(学部)の創設などの取り組みに10億ドル(約1100億円)を投資すると発表した。

 最高情報責任者(CIO)やその他のテクノロジ担当役員、事業担当役員が、この転換点を迎えるオートメーションを取り入れるには、過剰な期待を煽る言説と現実の差を見極めながら取り組みを進める必要がある。Forrester Researchは11月、オートメーション業界の2019年を展望する予想レポートを公開している。このレポートでは、オートメーションがもたらす新たなビジネス価値に注目している。特に重要な予想は、次の3つだ。

  • オートメーションによって雇用の10%が失われるが、3%の雇用が新たに創出される。Forresterは、オートメーション技術が雇用に与える影響について、2015年から調査を行っている。世間でよく引用される予想の中には、雇用の半分近くが失われると主張するものもあるが、Forresterは今後多くのワークフローで人間と機械が力を合わせて作業をするようになるとともに、オートメーション経済は新たな雇用を創出すると考えている。2019年には、RPAのロボットを管理できるロボットの専門家や、チャットボットや音声操作できるスキルのユーザーインターフェースを改善するクリエイティブな人材やデザイナー、ビジネスの課題を解決する業務プロセスの専門家などをCIOが新たに雇用するため、2018年(2%)よりも多くの雇用が生み出されるとみている。失われる雇用に関しても、労働力率が比較的低い状態が継続する状況であれば、必ずしも失業率の上昇につながるとは限らない。オートメーションの拡大により、機械的な作業をロボットに任せられるようになり、従業員の労働体験にもメリットが生まれるだろう。
  • 企業は組織体制やフレームワークへの投資を進める。2019年の終わりまでには、大企業の40%が、オートメーションセンターやオートメーションに関するフレームワークを設けると予想される。オートメーションプラットフォームの選択肢が増えるに従い(RPA、DPA、BPM、機械学習など)、利用ケースに応じて適切なソリューションを適用することは課題となる。この問題に対応するため、企業はこうした問題に集中的に取り組む、統一的なフレームワークに基づいて設計されたコーディネーションセンター(オートメーションセンターまたはセンターオブエクセレンス)に投資するようになる。こうしたオートメーションセンターは、さまざまなビジネスの課題に対して、基本的な対応方針や、技術的な互換性と統一性を確保しながら、さまざまなオートメーション技術をどのように適用すべきかを判断する役割を負う。
  • スタートアップの10社に1社では、人間の従業員よりもデジタルワーカーの方が多くなる。一般的に言って、今日大きな成功を収めている多くの企業は、過去の企業よりも少ない数の従業員で業務を行っている。Kodakは、1973年のピーク時には12万人の従業員を抱えていたが、Facebookが2012年にInstagramを買収したとき、Instagramには13人しか従業員がいなかった。2019年には、スタートアップの10社に1社程度存在する、よりアジャイルで、リーンで、規模の変化に柔軟に対応できる形で業務を行っている組織は、雇用ではなくタスクの観点から業務を捉えるようになり、オートメーション優先の原則に従ってビジネスモデルを構築するようになると予想される。

 今後も、ここに挙げたようなポイントやオートメーションに関するその他の新たな展開が、ビジネスのやり方を変えていくだろう。過剰な期待については今後も懸念すべき問題として残るだろうが、2019年には、多くの実践的で現実的な利用ケースが登場し、オートメーション革命はさらに加速していくはずだ。予想レポートの本編には、他にも多くの知見が盛り込まれている。

RPA

 Forresterのアナリスト、リサーチャー、リサーチアソシエイツ(O'Donnell、Craig Le Clair、Chris Gardner、Bill Martorelli、Christopher Condo、Jenny Thai)が今回のオートメーションに関する予測に貢献した。

 -- Forresterのバイスプレジデント、プリンシパルアナリストJ.P. Gownder

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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