中国ビジネス四方山話

中国で普及したQRコード決済とその後--スマホ決済「PayPay」の将来を占う

山谷剛史 2018年11月27日 06時15分

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 ソフトバンクとヤフーが共同出資する決済サービス「PayPay」で、支払額の2割または全額を還元する「100億円あげちゃうキャンペーン」が話題となっている。中国でも、アントフィナンシャルの支付宝(Alipay)やテンセントの微信支付(WeChatPay)が利用促進キャンペーンを展開。それらが一因となって、キャッシュレス決済を一層普及させた。スーパーのレジにおいてはカードを差し出す手間からか、デビットカード「銀聯(UnionPay)」の利用者を見る機会がかなり減少した。

 さて、QRコードを使ったキャッシュレス決済で先を行く中国でも、普及を後押ししたのは、アプリのインストール/決済の利用でお得になるキャンペーンだ。そしてその後、支付宝や微信支付で新しい機能が追加されるとともに、連携する新サービスが続々と登場した。日本のQRコードを活用したモバイル決済の未来を占う上で、支付宝や微信支付のQRコード決済後の動向を紹介する。

 支払いに関しては、地方都市の市場や屋台にまで電子決済が普及したのは各メディアで報じられている通りだ(しばしば誤解しがちだが店舗が電子決済に対応したことと、多くの人が電子決済を利用することは別物である)。屋台や市場の野菜売りがキャッシュレスを実現するために何か特別な機器を導入する必要はなく、スマートフォンで表示されるQRコードを掲示し、スキャンしてお金を払うだけで個人間送金ができる。店側はいちいちQRコードをスマートフォンで表示するのは手間がかかるのでQRコードを印刷して店内に掲示する。

 QRコードを表示するのは紙に限った話ではない。スマートテレビで見たい有料動画コンテンツを見ようとすると、画面に支払用のQRコードが表示される。これを同じようにスキャンしてアプリで決済すると、動画がすぐ見られるようになる。間もなく、中国で稼働するテレビの半数がスマート化するという調査結果が出ているため、お茶の間においてもQRコードによる電子決済をすることが当たり前となる。

 またQRコードが表示されるとは限らないが、コンテンツと言えばスマートフォンやPC向けのゲーム課金やテキスト・音声・動画など、さまざまなコンテンツでの支払いに対応する。支払いのハードルや手間が下がったこともあって、中国での正規版コンテンツの購入が普及している。

 中国で電子決済が普及するきっかけとなったのは、UberのようなシェアライドのDidiや快的だ。Didiは騰訊の微信支付と、快的は支付宝と提携し、運転手側と利用者側のそれぞれに5~15元が提供された。利用者はタクシーよりも安く乗れて、運転手はよりもうかる状況となり、多くの人が利用した。阿里巴巴と騰訊が2カ月で総額15億元(約250億円)分の紅包(金一封)をばらまいた結果、利用者は急増し、サービスは一気に普及。滴滴と快的ともに、登録利用者数は8000万~9000万人、登録運転手は80万人、1日の利用数は快的が1200万人、滴滴が1500万人を記録した。中国での電子決済もばらまきによって電子決済と付帯サービスが普及していった。

 もうかると言えば、支付宝がリリースしたチャージ金額内での投資信託「余額宝」が、銀行の預金よりも高い利率が得られることもあり、気軽にできる投資として多くの人の注目を集めた(後に微信支付も同様のサービスを投入している)。

 リアル店舗での支払いから、シェアサイクルやシェアバッテリ、シェアライド、フードデリバリといったサービスへの支払いへと利用用途は拡大する。これらが大都市で当たり前にある存在となり街の景色は一変したわけだが、シェアサイクルをはじめとした各サービスについては各所で語り尽くされているのでここでは説明を省く。

 日本でも既にシェアサイクルやシェアバッテリが運用されているように、これらは必ずしもQRコードによる決済でなければ実現できないサービスではない。しかしQRコードによる決済の方が対応するスマートフォンの機種が多く、NFC非搭載機種でもカメラは搭載しているので、基本的にはどのサービスでも利用できる。また場合によっては利用の手間が減り楽になる。

 支付宝については、その後、信用スコアを導入。シェアサイクルは当初、車両代金分のデポジットを前払いするが必要だったが、支付宝に信用スコアを導入することにより、信用を担保にデポジットを不要にする動きが加速する。シェアサイクルやシェアバッテリに加え、商品や業務機械のレンタルもデポジットが不要になる。信用スコアはクレジットカードを持てない人にもそれに相応するサービスを提供しようというもので、信用スコア導入により、(起業などの)ローンのハードルが下がった。

 微信支付や支付宝は、アプリ内でミニプログラムを提供し、ポータルサービスとなった。微信支付からアプリを探し、微信支付内でアプリが起動する。アプリ内プログラムで支払いが発生する際は、比較的少ない手間で微信支付からお金が落ちる。例えば、シェアライドのDidiを利用するにしても、わざわざ単体のアプリをインストールする必要はなく、微信支付にDidiのミニプログラムが用意されていて、そこからサービスを利用できる。阿里巴巴系のネットサービスは支付宝のミニプログラムからインストールできる。シェアサイクルだろうとシェアバッテリだろうと、単体アプリをインストールする必要はない。サービスの機器に付いているQRコードをスキャンすることで、それに合ったアプリが微信支付や支付宝の中で起動して利用料金を支払える。

 微信支付や支付宝は単なる支払い手段からポータルへと化けた。PayPayも中国で起きたことを学んでいるはずだから、中国で起きたことを多かれ少なかれ日本でもなぞっていくのではなかろうか。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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