調査

時代のニーズに合わない教育や企業研修が経済成長を阻む恐れ--アクセンチュア調査

NO BUDGET

2018-11-28 07:45

 アクセンチュアは11月21日、調査レポート「求められる教育の変革(It's Learning. Just Not As We Know It)」を発表した。これによると、労働時間の51%(対象G20メンバー・14カ国平均:以下同)および54%(日本単独)は、先端技術による高度化の余地があることが分かった。また、労働時間の38%(14カ国平均)および36%(日本)に自動化の可能性があるという。

 同レポートは、G20若手起業家連盟(G20 YEA)と共同で作成したもので、先端技術が特定の業務タスクやスキルのニーズに与える影響について分析し、経済成長への影響を算出した。

 アクセンチュアはスキル・タスク・先端技術による影響に類似性のある10の職務・職種グループを特定し、このグループ分類を用いて、G20メンバー・14カ国の労働人口構成を分類した。さらに、米国労働省のOccupational Information Network(O*NET)と国際労働機関(ILO)のデータを利用して、自動化と強化・増強(オーグメンテーション)の影響を受ける可能性のある労働時間の合計を職種ごとに算出し、十分なスキル習得がなされなかった場合の国内総生産(GDP)への影響を計測した。

 また、複数の業界のビジネスリーダー・専門家・実地労働者を対象に踏み込んだインタビューを実施するとともに、アクセンチュア社内の教育・テクノロジ・人材開発のプロフェッショナルのノウハウと経験も参考にしている。

 例えば、看護師などのケア&サポート関連の職種は、先端技術の導入による生産性を最も高める余地がある分野で、労働時間の64%(14カ国平均)および66%(日本)が高度化できる可能性があり、10年以内にこのうち14%(14カ国平均)および22%(日本)の高度化が達成される可能性があることが分かった。これらの職種では、今後10年間で140万人もの増員が必要になると見られており、この需要に対応するには、先端技術を活用するためのスキル習得に向けた適切な投資が不可欠だという。

 アクセンチュアでは、新しいテクノロジが人の仕事を助けるか、自動化するかに関わらず、労働者のスキル向上は最も緊急性の高い優先事項だとした。そして経営者に求められることは、研修内容の改善に取り掛かる前に、自分たちの業界がテクノロジによってどのように変わるのか、その変化に対応するためにはどのような新しいスキルを従業員に習得させる必要があるのかを、事前に正しく理解しておくことだという。

 また、同社では、人工知能(AI)などの先端技術を活用できる人材を効果的かつ効率的に育成できなければ、日本の場合、10年間で5440億ドルの経済成長が危機にさらされ、GDPに毎年1.6ポイントのマイナス効果を与えるという調査結果あると指摘する。

重要性が高まりつつあるスキルセット
重要性が高まりつつあるスキルセット(出典:アクセンチュア)

 同社は、求められるスキルとのギャップ解消に向けて「経験学習の加速化」「組織ではなく個人に焦点を当てる」「AI弱者に学習の機会を与える」という3つのアプローチを推奨している。

 経営陣も巻き込んだデザイン思考の導入、実課題を題材にしたケース演習、現任訓練(OJT)、徒弟制度的実践教育など、幅広い方法論を取り入れながら経験学習を加速化させていくことが重要で、教育機関では、座学での知識習得にとどまらず、プロジェクトベースのアクティブラーニングやチーム学習の場を提供し、仮想現実(AR)やAIといった新技術を取り入れることで、個々の特性に応じた、エンゲージメントの高い教育を行うことができるという。

 また、個々の特性に応じた意味のあるスキルセットを習得させることが重要で、中でも、高度な論理的思考・創造性・社会的知性に力点を置いた育成が大切だという。また高齢者や教育水準の低い人に合わせた施策を導入し、適切なトレーニングやキャリアパスの提供が必要だという。さらに生活スタイルに合わせて柔軟に学習することができるモジュール式のコースのほか、自己学習計画のための助成金など、生涯学習を促す新たな財政支援策も欠かせないとした。

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